Steamにてデモ版が配信されていた「黄泉~悪夢のアイランド~」。タイトルからして「クアリ―~悪夢のサマーキャンプ~(The Quarry)」のフォロワーであることがわかる本作。
実写映像を駆使したホラーアドベンチャーとなっており、今年ヒットした台湾ホラー「呪詛」を彷彿とさせるアジア的なおどろおどろしさのある世界観は魅力的でした。
一方で日本語翻訳がとにかくひどい。機械翻訳をそのまま、かつ精査もせず載せたようなレベルで、雰囲気を台無しにしています。テキストを楽しむスタイルのゲームですから、かなり致命的な欠点と言えるのではないでしょうか。
概要を見ていきましょう。
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黄泉~悪夢のアイランド~概要
開発、パブリッシングはMountain & Sea Studio。複数人の俳優を使った実写映像もこさえていることからそれなりの資金力があるスタジオだと思われますが、本作「黄泉~悪夢のアイランド~」が初の作品であること以外は特に検索情報は出てこない謎のスタジオです(わかり次第追記します)。
舞台となるのは、中華圏と思しき文化が見られる孤島「黄泉島」。デモ版をプレイした限りでは詳細はわからないのですが、「自らの死」をめぐる何らかの理由で島を訪れた霊媒の少女イーシンとその父の二人が「赤い服をまとった少女の霊」をめぐる騒動に巻きこまれるホラーアドベンチャーとなっています。
実写映画を動かしながら進む
ゲームは実写映像を駆使した「遊ぶ映画」のよう。物語はセリフ選択によって分岐するパートと脱出ゲームのように謎解き要素のアルパートに分かれています。
これらを交互に繰り返しながら、攻略していく内容のようです。
端的に言うと今年発売された「The Quarry」のようなシステムです。デモ版では娘イーシンとその父、黄泉島の怪異目当てに訪れた「女動画配信者」が登場。
それぞれの生き死になどの流れは選択肢によって上下する各キャラクターの「親近感」によってフラグ管理されており、その後の展開を左右するものとなっているようです。
正直に言えば、アドベンチャーパートでのミニゲームや死亡演出などに若干の安っぽさを感じます。
ただ実写映像で表現される世界観は、かなり好みでした。
洋ホラーのような直接的なグロゴア描写はないものの「何かの存在を感じさせる廃病院」「散乱する窓ガラスの中心に置かれたかわいい子供の絵」などなど嫌ぁ~なロケーション、アイテムが目白押し。醸し出される夜道を歩いているのが怖くなるような雰囲気は最高です。
またホラー映画あるあるを抑えたキャラクター造形も好ポイント。野次馬根性むき出しで呪われた地に来て、タブーをすべて踏み抜いてひどい死に方をする動画配信者、いいですよね。
雰囲気は素晴らしいが訳文がおかしい……
こんな感じで全体的には「良作」の雰囲気を感じたのですが、おかしな日本語が全てを台無しにしています。もう、メチャクチャなんです……。
訳文は機械翻訳そのままのクオリティーです。意味は通るものの場面に不釣り合いな表現は当たり前、デモ版では冒頭の20分ほどが遊べるのですが、これだけで明らかな誤訳が頻繁に登場します。
明らかな誤訳のほかにも、同じシーンで繰り広げられるイーシンと父の会話の訳文が敬語になったりため口になったりするなど、表現が一されていない点も気になりました。
例えば、上の画像はケガをしたイーシンを運ぶシーンなのですが、文脈的に明らかに敬語で話す場面ではありません。これ以外にも突然やたらとフランクになったり、厳粛になったりと訳文の情緒がメチャクチャです。
さらに輪かけてひどかったのが、キャラクター同士の呼び名です。イーシンが父親を「パパ」と呼んでいた次のシーンでは突如「おとっつぁん」呼びに……。笑いをこらえるのが難しいレベルでした。
「黄泉~悪夢のアイランド~」は12月2日にアーリーアクセス版が発売となりました。アーリーアクセス期間は2か月を予定しているとのこと。この2か月で日本語訳の向上を期待したいところです。
※追記:12月2日に発売のアーリーアクセス版を購入。クリアまでプレイしました(約2時間)。ゲーム本編はそれなりに楽しめたものの、やはり翻訳はひどかったです。アーリーアクセス版であることを考慮に入れれば問題ない、とのレビューもありました。
確かに訳のおかしさから生まれる妙な魅力はあります。しかし、映像からストーリーを察するに、本作はシリアスな作風です。訳文のおかしさによって、期待したプレイ体験が大きく損なわれている。そう、個人的には思ってしまいます。アーリーアクセス期間を経て、翻訳が修正されているかどうかで、特に日本では評価が大きく変わるのではないでしょうか。
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