CyberShadow レビュー 忍者龍剣伝ライクの硬派な2Dアクションゲーム

久しぶりに骨太で脳みそが沸き立ちそうな面白さのアクションゲームがあったので、紹介する。

フィンランドのインディーデベロッパーMechanical Head Studiosが開発したレトロスタイルの2Dアクションゲーム『CyberShadow』(PlayStation4/NintendoSwitch版2021年1月26日発売 Playstation4 1998 円  Nintendo Switch版1980円)である。

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タイトル画面

Cyber Shadowストーリー サイバーでニンジャ 美麗なドット絵のアニメーションがグッド

CyberShadowの舞台となるのは、マッドサイエンティスト、「プロジェン博士」率いる、人口生命体の襲撃により破滅した、巨大都市メカシティ。主人公のシャドウは世界を守る謎の組織”忍者の一門”の一員だ。人口生命体の襲撃によって起こった世界の崩壊に巻き込まれ、シャドウは命を落とすも、機械の体を得て復活。相棒のロボット「レギオン」や他の忍者の力を借り、捕らわれの身となった忍者一門の長”マスター”を助けるため、そして世界の均衡を守るためにメカシティを奔走する。

道中でシャドウは、マスターに起こった悲劇、そして、マスターの父親でもあり、一門の盟友でもあった、プロジェン博士が何故裏切り、人口生命体を率いて世界を滅ぼそうとしたのか、その謎がひも解かれていく。というのが大まかなストーリー。

こうしたストーリーは各地を探索することによって、明らかにしていくことができる。各ステージの要所では、美麗なドット絵のアニメーションが挿入され物語の背景がわかるほか、特定のボスや生き残った忍、その仲間たちとは会話もできる。またステージの各所には、断片的なログが遺されたPCがおかれているほか、命を落とした忍者や研究者たちの遺骸が残されている、残されたログや残留思念を読み取ることで、プレイヤーは徐々にストーリーの沿革が明らかになっていくという作りだ。

狂った天才科学者、ヒロインでもあり師匠でもある存在、窮地に陥ると脳裏をよぎるすでにこの世にはいない仲間たちとの思い出。いわゆる勧善懲悪のストーリーではない。物語の黒幕であるプロジェン博士が狂っていく顛末、そしてライバルキャラのアパリターが何故、忍者たちを裏切ったのか、マスターとシャドウの関係とは。そして一度命を落としたシャドウの行く末などが、丁寧に描かれ、プレイヤーがそのすべてを見てエンディングに到達した後、物語について考える、余韻に浸る余地が残されている作りになっていた。

ちなみに物語ないではどのようなキャラクターか、ほとんど触れられることはないのだが、シャドウの回想シーンのアニメーションでは露出度高めの先輩忍者が、忍者の里”幽里”では”地味メガネ女忍者”が脈絡もなく現れる。物語とは何の関係もないところで、唐突に制作陣の性癖をぶつけてくるところも個人的には良かった。

Cyber Shadowはレトロスタイルのステージ制2Dアクションゲーム。

Cyber Shadowは全11面のシンプルなステージ制の2Dアクションゲームだ。横スクロール面だけでなく、ドンキーコングやスーパーマリオのトロッコ面のように乗り物(バイク)に乗って進む、強制スクロール面もあり、ステージ構成には製作陣の遊び心が垣間見えた。

道中にはHPアップアイテムや後述する特殊能力を使用するためのSPを上昇させるアイテムがおかれている。これらのアイテムの一部は”普通のジャンプでは取れない高さ””明らかに届かない距離””通常攻撃では壊せない壁”を越えた先にあり、ゲームの進行状況によっては取ることができない。後述する特殊能力を獲得することで、やっととることができるようになる。

このように若干の探索要素はあるのだが、Cyber Shadowはステージを後戻りしたり、探索する、いわゆるメトロイドヴァニアのゲームではない。基本的に一度始めたらやり戻しが効かず一気呵成に進んでいく。ゲーム内には功績というトロフィー要素も用意されている。こちらも、HPやSP上昇アイテムをすべて集める要素や特定のアクションを決めた回数に応じて獲得できるもの以外は一度ボスを倒し、ステージをクリアするとやり直しがきかないものがほとんどだ。また道中も必ず倒さなければいけない強敵の中に、能力値アップのアイテムを落とすものもおり、あえてステージをいったりきたりしてアイテムを集めなくてもプレイスキルによってはクリアはできるようになっている。

全部で8つのシンプルながら多彩なアクション

行き返ったばかりの主人公・シャドウは本調子ではない。最初に使えるアクションは攻撃、移動、ジャンプだけだ。ステージを進め、強敵にとらえられていた仲間の忍者を開放する、道中に置かれた、鷹や龍など動物を模した像に祈ることでたどり着く、忍者の本拠地”幽里”にある道場の試練をクリアすることで、シャドウは本来の力を取り戻していく。最終的には以下8つのアクションが解放される。

〇手裏剣投げ(↑+攻撃ボタンでできる遠距離攻撃)

〇上方攻撃(↓+攻撃で上方向に攻撃するSPを消費することで、3方向に炎を飛ばす強力な攻撃に)

〇パリィ(デフォルトでは攻撃に合わせて→キー 敵の攻撃を無効かし、はじき返すことができる)

〇壁つたい(壁にしがみつくことができる、そのままジャンプボタンを押すと三角とびが可能)

〇下方攻撃(上空で↓+攻撃ボタンで、下方に攻撃ができる、上空にいる敵にうまくヒットさせることができる多段ジャンプができる。また再度攻撃ボタンを押すとSPを消費して、より強力な攻撃ができる)

〇ダッシュ(方向キー二度押し、あるいは任意のボタン(PS4版のデフォルトではR1ボタン)また、ダッシュ中に攻撃ボタンを押すことで滑空でき、滑空中は無敵だ。また、滑空中に敵に攻撃を当てると連続で滑空ができるようになる。)

〇二段ジャンプ

〇ため攻撃(近接攻撃と遠距離攻撃強化される。近接攻撃のためは威力が上がるほか、道中にある赤い壁を破壊できる。遠距離攻撃をためると着弾後時間差で爆発するクナイを投げるようになる)

基本的にこれらの能力が追加されたといったも道中が楽にはならない。後述するように難易度はずっと鬼だ。身に着けた後には、新しく手に入れた能力を使わないと攻略が困難(あるいは不可能)な局面が出てくる。しっかりと練習をし、あるいは繰り返し死んで、プレイスキルを身に着けることが求められる。

個人的には敵をバッタバッタと斬り伏せながら、さっそうと進んでいく、ダッシュが爽快感があってよかった。他の2Dアクションゲームではあまり見られないCyberShadowオリジナルの要素だといえるだろう。

ただ、一つ残念だったのが、パリィである。上記に上げた能力は、すでに説明したように、場面に応じて使いこなせないと攻略が困難なものだ。だが、パリィに関しては、そもそも攻略に必須な能力ではない。また、操作の難度がかなり高い。敵の玉が当たるギリギリに入力するというものだ。意図的に入力できるというよりは、たまたま敵の光弾に向かってうまく、入力できた、という感じで成功する場面が多かった。正直なところ、よほど習熟しないと、随意に使いこなすことはできないだろう。だが、パリィが成功して得られる恩恵はその難易度に見合っているとは感じられなかった。はじいた光弾で与えられるダメージ量が多くないのである。

ギミックもクールで、サイバー忍者シャドウの必殺技の一つのような趣のある技なのだが、パリィができたところで、難局打開できるようにはならず、あまりやるメリットを感じられなかった。功績の中には、パリィの回数によって獲得できるものやパリィのみでとあるボスを倒すことで獲得できるものもあるのだが、功績を達成する以外にはパリィを特に使う場面が正直にいってない。ここはもう少し工夫がほしかった。

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敵の攻撃を無効化して光弾にしてはじき返すというクールなアクションなだけに、余計に残念。ただ、CyberShadowはソウルシリーズのようにパリィが攻略のかなめになるゲームではないので、レベルバランスを考えたときには仕方がないのかもしれない。

Cyber Shadowは死ぬことが前提の高難易度

CyberShadowの難易度は一言でいって鬼。初期ロックマンシリーズや悪魔城、魔界村シリーズや忍者龍剣伝に影響を受けたと公言しているだけあって、プレイヤーに一切媚を売らないゲームだ。難易度設定もなく「攻略できるもんならしてみろ」と言わんばかり。硬派である。

敵の配置、トラップの配置が巧みで、死ぬことが大前提の作りだ。しかも、中盤以降ではなく、序盤の面から、その片鱗が垣間見られる。後述する工夫が無ければ、レトロゲームよりも理不尽といえるほどの難しさである。落ちると死ぬトラップが配置された床の前には小さい足場、しかも敵が配置されている。悪魔城シリーズや忍者龍剣伝と同じく、CyberShadowの主人公シャドウは敵の攻撃を受けるとノックバックしてしまう。つまり、攻撃を受けると、場所によってはそのまま即死トラップにまっさかさまである。

道中にはその他にも、触れると即死するレーザービームが一定間隔で発射されたり、移動がしづらい水中にシャドウを感知すると、接近して爆発するタイプの地雷がおいてあったり、終盤では要所要所に敵が配置された足場をひたすらダッシュで走り抜けなければいけなかったり、触れると即死する肉の塊が迫ってきたり(しかもその道中にも触れると死ぬ足場や壁が随所に置かれている)製作陣の性格の悪さが感じられる緻密に設計されたマップの数々がプレイヤーを待ち受けている。

プレイヤーは何度もシャドウを死なせながら、敵の配置、トラップの配置、マップの特性、そして有効な攻略手段を手探りで探しながら、ゲームを進めていくことになる。

ただし、単に難しくするだけでなく、アクションゲーム初心者が挑戦しても、熟練のプレイヤーが遊んでも、飽きないように工夫が凝らされているように感じた。

ステージは確かに高難易度だ。だが、本作は残機性ではなく体力性だ。残機で押し切って難所を抜けることはできないが、ゲームオーバーになり、ステージの最初からやり直すことにはならない。再度難所を潜り抜け、前回死んだポイントまで戻す、”戻し作業”の必要はCyberShadowにはない。随所にチェックポイントがあり、死んだ場合は最後に通ったチェックポイントから再開する。

チェックポイントの配置の間隔もちょうどよいと感じた。短かすぎでダレることもない。かといって、長すぎてめげそうな場所にもない。即死トラップや敵が密になっている難所抜けた先、ボス戦の手前など、ここに欲しい、という場所にあるのだ。また、リスタートするまでのロード時間も短く快適だ。繰り返し死んで覚えるプレイに飽きないよう、工夫がなされている。

いわゆるお助け要素もある。CyberShadowでは、道中の敵を倒すと、エネルギーが手に入る。チェックポイントで集めたエネルギーを投入すると、機能を追加することができるのだ。HP回復やSP回復機能もあるほか、チャージにより強烈な遠距離攻撃が可能な「チャージカノン」シャドウの周囲を回り、近づいた敵を自動で攻撃してくれる「ニンガン」、盾にもなり、攻撃ボタンを押すことで相手に波動を飛ばすこともできる「Eフィールド」、SPを一定間隔で回復してくれる「SPサパー」など、道中役に立つサポートアイテムも入手可能だ。ただ、こちらも、3発敵の攻撃がヒットすると、破壊される使用になっていて、優しくなりすぎない、ゲームバランスがくずれないよう、工夫がなされているように感じた。

ステージの最後プレイヤーを待ち受けるボスも秀逸だった。CyberShadowには中ボスも合わせると全部で12体ボスがいる。こちらも道中と同じく難易度が高い。だが、いわゆるレトロアクションゲームのお約束を踏襲しており、何度も戦うことで、攻撃のパターンや攻撃の間隔、動作が覚えられるようになっている。初見では勝ち筋が見いだせないようなボスでも、繰り返し死に、攻撃のタイミング、パターンを学ぶことで攻略の糸口がつかめるようにできていた。

どのボスも攻略難度は高い。だが、画面を埋め尽くすような光弾を避ける、フレームギリギリでの回避が要求されるといった、瞬発力、動体視力など持って生まれた能力が試されたり”運”が関わってくるような場面はない。これも良心的だと感じさせられた。

やりごたえはあるが、鬼畜ではない、現代向けにアレンジされたゲーム

CyberShadowは総じて難易度の高いゲームだ。プレイヤーに媚びることもない。難易度設定などゲームバランスを変える要素もなければ、ごり押しができる場面もほとんどない。プレイヤーは地道にスキルを身に着ける必要がある。ただ、制作陣はステージやボスの挙動の端々に攻略の糸口をちりばめている、それを見つけ出し、ゲームを進めていく楽しさのあるゲームだ。

時に理不尽ともいわれるレトロ2Dアクションゲームの難易度とやりごたえ、手触りはCyberShadowにはしっかりとある。だが、現代的な遊びやすさがそこには同居している。

人を選ぶ作品だとは思うが、やりごたえを求めている人は一度手に取ってみてほしいゲームだと思った。少なくともロックマンとか悪魔城はが好きな人は絶対に好きだと思う。やってみてください。

cybershadowjp.com

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