映画007シリーズをモチーフにした、FPSゲーム「ゴールデンアイ 007」は1997年任天堂64専用ソフトとして発売された。Doomやウルフェンシュタインとならぶ、FPS初期の名作であり、日本での販売本数こそ振るわなかったが、全世界で800万本以上という大ヒットを記録した作品だ。
当時としてはハイクオリティな3Dのキャラクターと マップ、スパイ映画である「007」をモチーフにスニークアクションを取り入れたスタイリッシュなつくりなど、ゲームとしてのクオリティの高さから、発売して20年以上たった今でも多くのファンに愛されている。
そして、スピードランナーたちにとってはスピードを競い合う格好の題材でもあった。今でも数多くのスピードランナーたちがステージ攻略記録を競い合っている。そんなゴールデンアイ 007のスピードランの世界記録が塗り替えられ、話題を集めている。
記録を更新したGus Rio氏の動画
世界記録が更新されたのは映画「ムーンレイカー」をモチーフにした隠しマップ「アステカステージ」の最高難易度「00Agentモード」のクリアタイムだ。同マップは「 ゴールデンアイ 007」内では屈指の難易度であり、00Agentモードでクリアするだけでも、一般のプレイヤーにとっては困難といわれている。
これまでの最高記録は2017年9月10日にLuke Szklarz氏が1分35秒で、以降記録は更新されていなかった。だが、7月31日、スピードランナーの一人Gus Rio氏がそれを1秒上回る1分34秒のクリアタイムをたたき出し、記録を塗り替えた。
素人から見ればたった1秒の違いだが、これは「ゴールデンアイ 007」のスピードラン史に残る歴史的な快挙だったのだ。なぜかというと、Gus氏はそれまで不可能と考えられていた方法を使い、記録を打ち立てたからである。
最高難易度である00Agentモードでは、5回攻撃を受けるのみでプレイヤーキャラのボンドは命を落としてしまう。このような状況にもかかわらず、アステカ遺跡のステージでは終盤、ボンドに向かい多数のタレットや敵が出現、集中攻撃を受け、必ずダメージを受けてしまう場面が存在するのだ。
これまでスピードランナーたちはボンドが終盤命を落とすことを防ぐため、マップにある体力を2倍にするアイテム「ボディアーマー」を使うという手段を取らざるを得なかった。
ボディアーマーは命綱なのだが、タイムを数秒ロスしなければならない場所に置かれており、スピードランナーたちにとっては目の上のたんこぶのような存在でもあった。
もちろん、多くのスピードランナーたちは、ボディ―アーマーを使わずに、アステカ遺跡をクリアすることを目指していた。だが、その方法は「ゴールデンアイ 007」のスピードランが始まってから20年以上、発見されなかったのである。
しかし、ここ数年、何名かのランナーが打開策を見つけ出した。最後の局面タレットがボンドを狙い打とうとする際、タレットがボンドに気づくギリギリまで引き付けてから後ろに下がり、直進すると、ボンドに攻撃が当たらないと、つまりボディアーマーを使わずにすむ、という抜け道が発見されたのだ。
そして、Gus氏がその方法を使い、破られることはないと考えられていた世界記録を更新したのである。歴史的な快挙にスピードランナーたちは狂喜しているようだ。
新たなメソッドが発見されたアステカ遺跡00Agentモードスピードラン。今後どのような記録が登場するのか、注目である。
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