以前、当ブログで体験版のレビュー記事を書いた、「カンパニーマン 社畜の下剋上」（Nintendo Switch）が１月２１日に配信開始となりました。クリアまでプレイ（難易度普通で3時間程度）したので感想をまとめておきます。
結論から言えば、体験版で期待した以上の体験ができる秀作でした。ただし、世界観を作るうえでそうなったのか、アクションゲームとしては難易度が低い点が気になります。（以下ストーリー紹介の箇所で、ゲーム内の日本語がおかしかった内容に関しては、説明を追記しています。また、道中のボタンはSwitch版を想定したものです）
カンパニーマン 社畜の下剋上 概要
カンパニーマン 社畜の下剋上の主人公となる優良企業「グッドウォーター社」の新入社員、若き社畜候補ジムです。出勤初日オリエンテーションを控え、過去を振り返るジム。彼が頭に思い浮かべたのは、子供のころゲームを一緒にしながら父とかわした「人生はゲームみたいなものさ」という言葉でした。
いろいろあってプータローになったジムの父
そこに現れるのが指導社員のウィリアムです。開口一番「初出勤日にさっそく居眠りか？」と嫌味たらたらで、とにかく嫌なやつそう。しかし、郷に入っては郷に従わざるをえず、逆らうことのできない新入社員ジムはウィリアムの教えに従い「グッドウォーター社」での渡世の仕方を学びます。
いやな指導社員ウィリアム
グッドウォーター社の渡り歩き方、それはキーボードを武器に目障りな社員をぶん殴り、解雇に追い込むこと。つまり、グッドウォーター社は、出世街道を暴力で突き進まなければならない、とんでも「ブラック」企業だったのです。
キーボードブレードでライバル社員をぶちのめせ
ウィリアムの指導になんの疑問も抱かず、ひとまずは受け入れるジム。すでに解雇されたと思しき社員をキーボードで容赦なくぶん殴ります。社畜根性丸出しです。
身辺整理をしている社員をぶん殴るジム
なんとか先を進みウィリアムのもとにたどり着くジム、しかしそこにはウィリアムの狡猾な罠が待ち受けているのでした。
人事部長エヴァンによって左遷されてしまうジム
ジムはウィリアムにはめられ、ジムは入社初日から「グッドウォーター社のごみ」と揶揄される最悪部署「カスタマーサービス部」へ左遷されてしまいます。カスタマーサービス部は社員が独房のような場所に閉じ込められ休む暇もなく働かされ続け、インターン生は文字通り使い捨ての人材として使われている、地獄のような場所です。
だから父は無色だったんだ じゃねぇよ
ジムは「社長になる」という野望のため、最下層の顧客サービス部からの昇進を目指し、奮闘します。口から火が出るほどの忙しさにあえぐ、コールセンターの女性社員。「Don’t Fired Me!（解雇しないでください！）」と悲痛な叫び声を上げながら空から降り注ぐ、人間爆弾とかしたインターン生。ジムは迫りくる社員たちをキーボードでぶちのめしながら、カスタマーサービス部の部長である「クレイグ」に昇進の直談判するべく、彼の部屋を目指すのでした。
クレイグはフロアに自分の銅像を置くやべぇやつ
道中「安月給では下らん質問まで答えられん」と小言を言う、双子の上司（課長）をぶちのめし追い落とすジム。そして彼はとうとうクレイグの元にたどり着きます。クレイグは暴力も辞さないその剛腕でインターン生を道具のように使うパワハラ野郎です。ジムが直談判をすると「文句があるなら、屈服させてみろ」と言わんばかりに、襲い掛かってくるのでした。
持病の心臓の発作が起こるまで上司をぶちのめすジム
クレイグが繰り出すインターン生爆弾をかわし、暴力で屈服させ、ついに昇進を認めさせたジム、そんな彼の前に「君の活躍を見させてもらったよ」と何やら裏がありそうな顔をしたグッドウォーター社の会長が現れます。
精魂尽き果てたインターンに攻撃的なメールでさらに追い打ちをかけるジム
会長から、そこのインターン生に嫌味なメールを打ってみなさいと、指導を受けたジムはたまたまそこに居合わせたインターン生に嫌味なメール（という体のエネルギー弾）を送り付けます。ジムのメールをくらい悲痛な面持ちで社を去っていくインターン生。血も涙もないジムの社畜っぷりに会長は思うところがあったのか、ジムにEメール爆撃（遠距離攻撃）の技能認定証を渡すのでした。
こんな感じでステージをクリアするごとに能力が増えます
「君なら残りの技も習得できる」と期待を寄せる会長と別れ、エレベーターに乗り込み、ジムはとうとう牢獄のような「カスタマーサービス部」から脱出します。
やっとのことでロビーにたどり着いたジムは受け付けのかわいい「アリス」ちゃんやブラック企業のロビーで営業する商魂たくましい喫茶店「ボッタクリーズカフェ」の援助を受け、「人事部」「経理部」「研究開発部」「マーケティング部」「営業・法務部」待ち受ける６つの部署を駆け上がり、社長がいるトップのCEO室を目指します。
ジムが想いを寄せるアリスちゃん
人事を改めさせ、時に不正会計を糾弾し、グッドウォーター社の根幹にかかわる研究不正をただし、「僕たちクリエイティブだから」と言わんばかりに予算を無視するクリエイターを黙らせるため、企業戦士として奔走するジムは次第に、グッドウォーター社経営陣の先兵のようになっていくのですが……。
ジムを待ち受ける現実の企業を風刺したようなステージたち
カンパニーマン 社畜の下克上は社畜・ジムを操るステージクリアがたのアクションゲームです。ジムの操作はジャンプ（Bボタン）こうげき（Yボタン）ダッシュ（Aボタン）、加えてファーストステージ「カスタマーサービス部」をクリアした後は、メールを使った遠距離攻撃が使えるようになります。
遠距離攻撃はステージをクリアごとに会長の技能研修を受けることによって（必須イベントです）増やすことが可能。メール弾丸やメールブレード、メールビームなど様々なメールを使った武器を駆使し、ジムの前に立ちはだかる問題社員を解雇（攻撃して倒す）に追い込んでいきましょう。
カンパニーマン 社畜の下克上のプレイヤーを待ち受けるのが、個性豊かなグッドウォーター社の各部署です（ステージ）。部署は全部で７つ。現実の企業で使われているような名前が付けられており、加えてその名前をモチーフにしたデザインになっています。
例えば、マーケティング部は一面木々に囲まれた天国のようなデザインで、空を飛ぶヒッピーのような敵がいいねボタンのような遠距離攻撃をしてきたり、営業部では慇懃無礼に頭を下げていた敵がジムが離れるや否やオオカミの姿になって襲ってきたりと、なんとも皮肉の効いた仕上がりです。加えて、カンパニーマン 社畜の下克上は世界観頼みのゲームではなく、ちゃんとアクションゲームのお約束も抑えています。
いいねボタン爆撃で攻撃してくるマーケティング部社員
序盤はジャンプと攻撃のシンプルなアクション、中盤はつるつるした床を進む部署や液晶に飛び込み行ったり来たりするパズル要素のあるギミックが出てきたり、終盤になると重力を反転させるマシーンが出てきたりと、アクションゲームとしての楽しさが堪能できるのです。
各フロアを駆け抜けていくと、部長室へと通じる大仰な扉が現れます。たどり着くと始まるのが、部長たちとのボス戦です。部長たちもマップと同じく個性豊か。それぞれの部署にちなんだ攻撃を仕掛けてきます。最初に戦うことになる部長クレイグはステージに降り注いでいた人間爆弾（インターン生）を使い、蹴り飛ばし攻撃してきたり、研究会発部の部長ババはグッドウォーター社の根幹にかかわるとある開発ブツを武器に変えてきたりと、多彩な攻撃を仕掛けてきます。
部長を倒すとはれて昇進です。受付のかわいい「アリスちゃん」が次の部署へ行けるようにするため、社員証をアップグレードしてくれます。
アリスちゃんが社員証をアップグレードしてくれるぞ
ちょっと攻略が難しいと感じたら、ロビーで営業している「ボッタクリーズコーヒーショップ」（某カフェに喧嘩を売っていそうな名前……）の力を借りましょう。
ボッタクリーズで一息つこう。
社員を解雇することで得られるお金を使ってコーヒーやチョコレートなどジムの能力を強化するアイテムを使って、ワンランク上の企業戦士へとジムを進化させてください。そして、さらに上の部署へ進み、社長を目指しましょう。
企業を風刺した世界観と完成度の高いアクションが相まって独自の魅力を生み出しているのがこのカンパニーマン 社畜の下克上と言えるでしょう。操作感におかしなところはなく、挙動もスムーズ。スピード感がありアクションとしては非常に楽しいゲームです。
カンパニーマン 社畜の下剋上、簡単すぎてボリュームが少なく感じる点が唯一気になる
ただし、カンパニーマン 社畜の下剋上はアクションゲームとしてはかなり簡単な部類です。世界観を楽しむためにそうなっているのかもしれません。ですが、マリオやドンキーコングなどカンパニーマン 社畜の下剋上とおなじようなプラットフォームタイプの名作と比較すると、とにかく簡単すぎる。即死トラップもなければ、敵の挙動もかなりわかりやすい。初見でもそこまで詰まらず、スムーズにクリアできてしまいます。
やり込み要素として、ハード、ブラック（クリア後に開放）さらに難しい難易度が用意されているのですが、違いはライフとメール攻撃をするための気力の数だけ（ノーマルはともに６、ハードは３つ ブラックは１つ）敵やボスの強さに変化はありません。わざわざ複数回プレイするほどの魅力は感じられませんでした。正直に言ってしまえば２１００円という値段にはあっていないかな、という印象を抱きます。
カンパニーマン 社畜の下克上、世界観のよさ、アクションの完成度の高さは光る作品ですが、今後購入される方はこの点は頭に入れておいてもいいのではないでしょうか。
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