アランウェイク2をクリアまでプレイしたので感想をまとめておきます。プレイ時間20時間前後。
短評
光を駆使したアクションが光るサバイバルホラー。程よい難易度と怖さでこうした作品になじみのないプレイヤーでも遊びやすいと感じました、また、「信頼できない語り手」を巧みに使ったシナリオはそれだけでも遊んでよかったと思える良質なものです。
ただし、PC版においては最適化の問題があります。さらに、ローカライズの点でも調整不足感が否めません。加えて、シナリオも正直、説明不足な点が多い。端的に言えばマーベルユニバース的な方式で、前作アランウェイクだけでなく本シリーズを作成している「レメディエンターテインメント」のタイトルをプレイしていないと理解できないことが多く、その点は不親切だと感じました。
概要
本作は2010年にPS3で発売され、ゲーム・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、大きな評価を集めたサバイバルサイコホラー「アランウェイク」シリーズ13年ぶりとなる続編です。
長らく時間は空いていますが、この間にPS4版、リメイク版が登場していることもあってか「世界観を引き継いだ新作」などではなく、純然たるナンバリングタイトルとなっています。
舞台は前作に引き続き、ワシントン州の田舎町「ブライトフォールズ」です。ブライトフォールズでおこった殺人事件の担当となったFBIのサーガ・アンダーソン捜査官が主人公。
相棒のアレックスケイシー捜査官とともにブライトフォールズを訪れたサーガ。田舎町で起こった通常の殺人事件かと思いきや、ブライトフォールズに巣くうカルト教団の存在が明らかになり、徐々に奇妙な方向へ物語は進んでいきます。
そして、次第に2010年にブライトフォールズで起こったベストセラー作家「アランウェイク」の失踪事件とつながっていき。
サーガは次第に彼の敵である「闇の勢力」との闘いに巻き込まれて行ってしまいます。その中で、自身も特別な力を持つことを知り、戦いの中で自らの出生に関する謎とも向き会うことに……。
そこに、闇の世界をさまよう、ウェイク、そして彼が描いた2作の小説の世界が絡み合っていき、複雑怪奇な物語が進んでいきます。
闇の世界を行くウェイク、現実世界を行くサーガの物語が交互に進んでいく
ゲームはシンプルなサバイバルホラーTPSです。
現実世界「ブライトフォールズ」をうろうろしながら、アランウェイクの力の謎や自身が持つ超自然的な力の謎を探っていくサーガパートの「リターン」。
そして、闇の世界にとらわれたウェイクを操り、2010年から2023年に至るまで、ウェイクの身に何が起こっていったのかを知る「イニシエーション」。
これら二つのシナリオをプレイヤーは進めていくことになります。
基本的に両者のシナリオは独立しており、ゲーム世界のセーフポイントでそれぞれのゲームシーンに移れるという仕組みです。
大どんでん返しもあるシナリオがたまらない
本作の面白い点が、シナリオの進め方でしょう。特に特徴的なのがサーガ編。サーガは自らの精神世界に没入し「ケースプロファイリング」のようなことをして「事件のあらまし」「各登場人物の謎」を置い、またそこで明らかになった事実によって現実も形を変えていく。そんな構成になっています。
そうしてプロファイリングを進めていくことでブライトフォールズで起こった殺人事件、そしてアランウェイクにまつわる「闇の勢力」との闘いの全貌が明らかになっていく。
さらに面白いのが、このプロファイリングはあくまでも「サーガの頭の中で行っている」つまり、客観的ではなく、あくまでもサーガの主観で物語は進んでいる、ということを利用したストーリー展開です。
詳細を話すとシナリオの重大なネタバレになってしまうので、詳しく語れないのですが、物語冒頭は一見すると「サーガがウェイクの超常的な力に巻き込まれてしまった」という形で進んでいくのですが、徐々にサーガ自身が小説技法で言うところの「信頼できない語り手」であることが明らかになっていき、それがウェイク編の「イニシエーション」にも重なっていき、終盤にかけて、世界の秘密、サーガの秘密が立て続けに明らかになっていく構成がたまりませんでした。
ホラー要素もたまらない
そして、シナリオを加速させてくれるのが、アクションパートです。シンプルなTPSですが前作と引き続き「光」を使ったアクションも導入されており、これが楽しい。シンプルに物量で押すアクションになっておらず、緻密なリソース管理が要求されます。
その他のホラー作品と異なり「グロテスクな化け物」は本作ではほとんど登場しませんが、このリソース管理の難しさが、怖さに拍車をかけているかなと。また、いい意味でサーガもウェイクも超人的な動きはしません。サバイバルアクションホラーだと、プレイになれてきて、主人公をたやすく動かせるようになったり、強力無比なアクションスキルが追加されたりして、次第にホラーゲームからスタイリッシュなアクションゲームになってしまうような作品もあるのですが、本作では、最後まで普通の主人公が超自然的な力にさらされる恐怖が描き続けられています。良いポイントですね。
実写を駆使した映像表現も最高
また、本作は非常にPCの要求スペックが高いことで話題になりましたが、とにかく映像表現が匠です。コールドロンレイクの不気味な草木の質感が、葉っぱについた水滴一つ一つに至るまで再現されていたり、手が込みまくり。
それ以外にも、ウェイク編である「イニシエーション」では適宜実写映像がさしはさまれ、映画をそのままプレイしているような臨場感あふれる体験が楽しめるようになっています。これもすごい。
ただし、PCのスペックがめちゃくちゃよければな
とはいえです。ここで本作がスペックの要求水準が高いという話に戻りますが、正直なところ、PC版に関しては記事執筆時点11月26日でも最適化が行われているとは言い難い状況でした。
筆者のプレイ環境では(laptop3070搭載のノートPC)要求水準を優位に超えていたのですが、プレイし始めて1時間2時間と立つと、画質を高水準にしていた場合、ラグが目立ち、まともにプレイできなくなります。
その後画質を低水準に落とすと、今度はハレーションのようなものが出てしまい、敵やサーガ、ウェイクが見づらくなってしまうという問題も。PS5ではどうやらこういった問題はないようですが、PCではよほどの高水準のモンスター機を使っていない限りは当分はこういった画質の問題に悩まされそうです。
日本語音声と英語音声が統一されていない日本版
そして、調整面での不具合をもう一つ。PS版をプレイしていないので、そちらについては明言できませんが、PC版では日本語ローカライズが残念な出来でした。
例えば音声。主人公のサーガは武田華さん、アランウェイクは初代から咲野俊介が登場するなどプロの声優さんが使われローカライズされているのですが、場面によっては日本語版のものから突如英語版のものに切り替わってしまったりしてします。
加えてフレーバーテキストに誤字脱字が多かったり。一つ一つの要素の出来は良いだけに、余計におかしさが目立ってしまっています。今後のアップデートで治してほしいところですね。
そして、シナリオも一部わかりづらい。
上記二つは調整不足によるものかなと思います。ゲーム本編の内容については、シナリオ面で気になる点がありました。
本作の主人公であるサーガにまつわるシナリオは完全オリジナルの部分も多く、シンプルに楽しめるのですが、それ以外の内容に関して事前に知っていなければならない知識が多すぎる。
本作を作ったレメディエンタテインメントでは異なる作品であっても舞台となる世界「同じ」という作り方をしているようです。マーベルみたいなアメコミの世界と一緒ですね。
そのため前作「アランウェイク」だけでなく「コントロール」などレメディエンタテインメントの他作品をプレイしていないと、全貌が把握できないようになっているんです。
例えば本作では闇の世界、現実世界ともに謎の用務員「アーティ」が登場するのですが、このアーティも正直なところ本作をプレイしただけでは何者なのかほとんどわかりません。ふんわりと「超自然的な存在」であることは明らかにされるものの、細かな説明は一指しなしです。何故かというと彼は「コントロール」の重要な登場人物の一人だからです。
そして、ネタバレになるので詳細は省きますが、さるサーガの親族もレメディエンタテインメント作品の登場人物であるため、その作品をプレイしないとバックグラウンドが深堀出来ない。
その他FBIのような存在のFBC、ウェイクとアレックスケイシーの関係など重要な設定事項も、本作の中でフレーバーテキストでうっすら明示されるものの、細かな説明はありません。何故なら他作品で説明しているから。
さらにウェイク編も「アランウェイク」をプレイしていないとわからない要素が一切の説明なしに登場してきます。もちろんナンバリングタイトルなので仕方ない面はあると思いますが、13年前の作品の内容をなんの説明なしに出すのはちょっと不親切だよなぁと思ったり。
というわけで、名作オブ名作足りえるクオリティではあるのですが、細かな点で調整不足や新規プレイヤーに厳しい点があるようにも感じた作品でした。
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