今回はアドベンチャーゲーム「The Bookwalker: Thierf of Tales」をクリアまでプレイしたので、感想をまとめておきます。油絵のようなイラストで描かれた静謐な「本の中」の世界を堪能できる良質なアドベンチャーでした。
The Bookwalker: Thief of Tales概要
開発はインディーデベロッパー「DO MY BEST」です。開設は2016年。今作The Boolwalker: Thief of Talesが二作目です。処女作はポストアポカリプス世界でひた走る、超列車の中で暮らす少年の冒険を描いた2Dアクション「The Final Station」。設定はどことなく映画・ドラマシリーズ「スノーピアサー」を豊富とさせ、こちらも結構好み。ちなみに、本作The Bookwalker: Thief of Talesのイラストを見て、名作「ディスコエリジウム」の影響(というかアートワークの雰囲気がすげぇ似ています)を感じたのですが、今のところ、関係はつかめませんでした。ディスコエリジウムに関しては、開発元企業と開発スタッフがもめていたこともあり、まさかね、と思っていたりもしていたのですがどうなのか。なにかわかったら追記したいと思います。
作家としての禁を破った男が主人公
ゲームはさびれたマンションから始まります。主人公の男の名は「エティエンヌ・クイスト」(以下エティエンヌ)、何やら一仕事あり、やっと帰宅した模様です。帰宅するやいなや、エティエンヌ宅の黒電話がけたたましく鳴ります。
受話器を取ると、声の主はエティエンヌの知人「ヴィンス」から連絡をするように言われたと告げます。会話から察するにエティエンヌの職業は作家、しかし、何らかの理由から「作家警察」より30年間作家業を禁じる措置を受け、作家としての力を封じるための「手錠」をかけられているようです。
声の主は「手錠を外す方法を知っている、外すためには6件仕事をこなしてもらう」と告げます。もちろん、仕事とは裏稼業のことであり、それこそが本に忍び込み書物の中にしか登場し得ない現実をゆがめるような力を持ったアイテムを盗み出すことでした。
書に忍び込み、登場人物と会話し、ときに内容を書き換え、アイテムを盗み出せ
ということで一冊目の仕事から本格的にゲームが始まります。このThe Bookwalker: Thief of Talesは、都合6冊のそれぞれ異なる書物の世界を舞台に、声の主からの依頼の品を盗み出すのが目的となります。いわゆるオムニバス形式のアドベンチャーゲームですね。
本の中には錬金術師が作った「不老不死の薬」奪取を目指し、怪しげな実験施設をいくホラー。「聖剣エクスカリバー」の持ち主となるものを探し、人々から得られる「信仰心」を燃料に銀河系を旅し続ける宇宙船を舞台にしたSF。魔法を学ぶ者たちが暮らす学び舎で突如盗み出されてしまった「伝説の杖」の行方を探るファンタジーサスペンス、などなど、どこかで見たことはあるような、ないような世界が待っています。
主人公であるエティエンヌが持つ、本の中と現実世界を行き来できる力や「インク」を使い、本の中の物語を改変できる力を駆使し、ときに敵対する書物の登場人物たちを退けながら、依頼の品を目指します。
基本的な流れとしては、会話やマップ随所にあるインタラクト可能な場所を調べて、情報を集めていく「アドベンチャーパート」、本の中にない道具をマンションの住人に借りに行く現実パート、そして、書物の中の敵対人物たちと戦うコマンド選択式RPGのような「アクションパート」に大きく分かれています。
エティエンヌの行動や登場人物たちとの会話、場面場面での選択によって、物語が徐々に変わっていき、結末が変わるようになっている、という仕組み。本の中に忍び込んだものの存在によって本の結末が変わっていくという設定は結構秀逸でしたね。
物語自体の仕掛けもよかったです。本作はオムニバス形式の物語を数珠つなぎにしていって最後まで進んでいくというシンプルな流れにはなっていません。書物内の時間軸とは別に現実世界での出来事も進んでいく構成です。
この物語ではキー要素の概要はプレイヤーに説明されることは一切ありません。我々が知るものとは異なる存在である「作家」。本の中を自由に行き来できる存在「ウォーカー」。単に物語に沿って存在しているのではなく個としての自由意志を持った存在として描かれる「登場人物たち」。そして「30年」という重い刑期を課せられた「エティエンヌの過去」などなど。これらの謎が実際にゲームないの書物世界を読み解いていくと明らかになっていきます。
このThe Bookwalker: Thief of Talesの現実世界での謎がときに本の物語ともクロスし、徐々に世界観が解きほぐされていく、これがたまらない。特にエティエンヌの謎が明らかとなる、終盤の畳みかけるような流れは最高でした。
ゲーム全体を通しての難易度はそこまで高くありません。また、何度もやり直して真実を解き明かすタイプのゲームでもない。それぞれの本を再走するストレスがないのが好印象。プレイヤーに諸情報が懇切丁寧に与えられるわけではないのですが、するりと物語の輪郭が頭に入っていくんです。
ゲームボリューム自体は少ないのですが、トータルのバランスを考えてもかなり良くできています。アートワークを見てビビットきたら、買って問題ない一作と言えるのではないでしょうか。
以下では、きになった点やギャップを感じた点などまとめておきます。購入の際の参考になれば幸いです。
気になった点
まず、挙げておきたいのが、本作はいわゆるアクション重視の冒険活劇ではない。ということです。この記事のタイトルにも静謐と書きましたが、アクションパートは挟まれるものの、基本的には周辺調査やキャラとの会話によって淡々と物語を進めていくタイプのアドベンチャーです。冒険活劇と言うよりは、本の内容を通して、エティエンヌの内面が描かれていくような構成になっています。
筆者は個人的にSteamでの紹介とデモ版を遊んだ段階でかなりアクションによった作品だと思っていたのですが、この点は良くも悪くも結構ギャップを感じました。
もう一つ気になったのが、Steamのレビューでも指摘されているアクションパートのテンポの遅さです。アクションパートはコマンド形式の戦闘です。敵キャラの攻撃順番などが決まっており、それを予測しながら、こちらの行動を決めていくタイプのもの。
戦略性がある、と言えなくもないのですが常にエティエンヌの行動が優先されるなど、結構優しめです。だから戦闘の緊張感がほぼないんですよね。加えて、敵、エティエンヌ、どちらのアクションスピードも、もったりしています。要するに簡単なうえにただ時間だけがかかるものになっているんですよね。
実績を見る限り、戦闘はカットできる要素のようです。テンポを気にするのはお門違いかなと思いつつもこの戦闘パートがThe Bookwalker: Thief of Talesのアドベンチャーとしてのオリジナリティの一つではある気もします。ですからテンポの悪さはあまりよくないかなと。
以上
その他のレビュー記事はこちらです。
筆者プレイ動画
デモ版をプレイした際の動画です(実況などはありません)参考になれば
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