2023年4月27日に配信を開始したホラーアクションアドベンチャー「Bramble The Mountain King」クリアまでプレイしたので感想をまとめておきます(プレイ時間約4時間)。
文章で見るのは面倒という方は末尾に筆者のプレイ動画を置いておきますので、参考にしてみてください。
Bramble The Mountain King 概要・魅力など
まずはタイトルの概要から。開発はスウェーデン中東部にある町「ノーショーピン」に拠点を持つDimfrost Studioです。
元々学生4人で立ち上げたインディースタジオのようですが、現在は複数のインターンを抱えるなどかなりの規模になっている模様。本作Bramble The Mountain Kingが事実上の初タイトルのようですが、そのほかのタイトルで開発を請け負ったりしているのかもしれません。
Bramble The Mountain King ストーリー
神秘的な森の中にある一軒家で、姉「リリモール」とともに暮らす少年「オーレ」が主人公です。ある日の夜「悪夢」から目を覚ますオーレ、隣のベッドにはいつもいるはずのリリモールの姿がありません。
どうやら「夜に森に出てはいけない」といういいつけをリリモールは破ってしまったようです。一人きりでベッドにいる恐さに耐えきれなかったオーレは姉を追い森に向かいます。
小人ノームや妖精たちの歓待を受け、森での冒険を楽しむ二人。しかし、夜が深まるにつれ、森は恐ろしい姿を見せ始めます。
突如現れる「トロール」たち。姉リリモールはトロールにさらわれてしまい、オーレも逃げ惑う羽目に。ぬかるんだ道を泥にまみれながら進み、ときには「ノーム」たちの家々がトロールに踏みしだかれていく姿を横目で見ながら森での逃避行を続けます。
しかし、ついにオーレはトロールに捕まってしまい……。
万事休すかと思いきや、朝が訪れます。朝日を浴びたトロールは石になり、オーレは辛くも「夜」を生き延びたのでした。
命をつないだオーレは、トロールにさらわれた姉リリモールを助け出すため「Bramble(茨)」に覆われた、神秘の森の奥へ向かいます。
神秘的な森を「語り手」に導かれながら進んでいこう
Bramble The Mountain Kingの舞台となる森は人の背丈はあるようなキノコ、タンポポなど奇怪な植物が生い茂っていたり、オーレたちよりも優に大きな「ハリネズミ」がいたり。その一つ一つが湿り気やにおいが感じられそうなほど丁寧に作られています。テクスチャが雑で作り物っぽいというものはないのが良いですね。
物語自体は開発陣が「北欧神話テイスト」と語っているように、おとぎ話のような進め方になっているのが特徴的です。
オーレやリリモールをはじめとした登場人物たちはなにか「」で言葉を発することはありません。物語は女性の声の「語り手」によって語られます。
こちらも説明口調のものではありません。雰囲気としてはお母さんが子供に読み聞かせるような感じでしょうか。
この語りを通して主人公オーレやオーレを導く森の古老、オーレの友となったゴーレムなどが置かれた状況や心情、そして舞台背景となっている物語がつづられてきます。Bramble the Mountain Kingはこの「おとぎ話」を通してプレイヤーが世界観を理解できるような流れになっているのです。
この表現があることで本作からいい意味で「ゲームっぽさ」が失われており、プレイを通して「Bramble the Mountain King」というおとぎ話に没入できるようになっています。
Bramble The Mountain Kingアクション概要 森の脅威から生き延びろ
神秘的なだけでなく常に命の危機が訪れる残酷な世界であるのもまたBramble The Mountain Kingの魅力でしょう。
ゲーム自体はシンプルなアクションアドベンチャーとなっています。
以下コントローラー操作
・Lスティック移動
・Rボタンダッシュ
・×ボタンジャンプ
・□ボタンインタラクト
といった具合でオーレを操作しながら、森の木々の間を駆け回り、謎を解き、物語を進めていきます。「残酷」といったように、自然は決してオーレの味方ではありません。ジャンプに失敗して崖から落ちればオーレは死んでしまいますし、まだ泳ぎを覚えていないオーレは足のつかない水辺では溺れてしまいます。
こうした、自然の驚異だけでなく、オーレの前には「トロール」のようなおとぎ話に登場する化け物から、「魔女狩り」「疫病」など中世・近世のヨーロッパを席巻した悪習や恐怖の歴史をモチーフにしたクリーチャーたちが立ちはだかります。
物語は
・アドベンチャーパート
・脅威との遭遇
・脅威が生まれた物語を知る
・脅威との闘い
といった具合に進んでいき、最後には化け物やクリーチャーたちとの手に汗握る「ボス戦」が待ち受けています。
ボス戦ではオーレを導く「光の石」を駆使し、敵と戦いましょう。
・操作 Lトリガー 照らす Rトリガーで敵に向けて光を放ち攻撃
これらのアクションを駆使して、クリーチャーの目をくらませたり、ときには力を削いだり、場合によってはオーレの側から「危害」を加えることもできたりします。
基本的に「一撃死」ではあるのですが、アクションの難易度はそこまで高くありません。アクションが苦手な方でも物語の没入感を損なわずにサクサク進められるのではないでしょうか。
ネタバレになるので、詳細は省きますが、一部のクリーチャーたちには化け物になってしまうに至った悲劇の物語があります。それを知り、撃破した後、良い意味で「後味の悪さ」「後悔」がプレイヤーそして主人公のオーレにも残る。それを通して少年オーレが成長していき、プレイヤーも追体験できる、という構成になっているのはたまりませんでしたね。
Bramble The Mountainkingの気になる点
全体的に完成度は高く、美しい世界感や独自のシナリオ構成は素晴らしいものだと思います。一方で気になる点もありました。
残酷描写があまりにリアル
まず、Bramble The Mountain Kingは少年を主人公にした、おとぎ話のような世界感のゲームなのですが、ヨーロッパのおとぎ話といえば「グリム童話」に代表されるように、単なるメルヘンなものだけでなく、ときに凄惨で痛々しいものがあります。
このBramble The Mountain Kingにもそんな残酷な描写が頻発します。この残酷描写が結構生々しい。人によっては「見ていられない」と思ってしまうのではないかと感じてしまいましたね。
ホラーゲーム的なおどろおどろしさ、というよりはシンプルに「うっ」となってしまうんですよね。
まず、最も耳にすることになるオーレ死亡時の断末魔がなまなましい。崖から落ちたら「ぐうぇ」という声が響きます。
死亡時の演出も痛々しいものが多い。
化け物に突き飛ばされたら、体がぐにゃりと折れ、力なく倒れたり、化け物が振り下ろす鉈にやられたら、胴が真っ二つになったり。オーレはとにかくひどい目にあいます。
また先ほど話したように「魔女狩り」「疫病」などが現実に起こった諸問題がテーマになっているシークエンスがあるのですが、ここでは容赦なく「吊られた死体」「磔にされた死体」「病に罹患する前に自死選んだ死体」「水に沈められた赤子の死体」などがほとんどそのままが出てきます。これも見ていて少ししんどかったですね。
詳細は省きますが「覚悟」を決めたとき「オーレ」の動きもかなり苛烈です。「少年」にこのようなことをさせるのか……。という思いが先立ってしまい、こちらも感情移入が難しかった。
「おとぎ話」をテーマにしつつも、ハードな描写があることによって安易なファンタジーものにならず、より強く少年「オーレ」の成長が描かれている点は魅力ではあります。
ただ、もともと「スプラッター」とか「グロ」「ゴア」描写が売りのハードコアなホラー作品として売り出されていたなら良いのですが、このパッケージで生々しい死体とか惨殺描写が出てくるのは結構きつい。ギャップを感じる人も少なくないのではないかと思ってしましました。場面によっては、筆者自身胃の中のものがこみ上げてきそうになる瞬間もありました。
ボリュームが少ない
ここも現状ではマイナスになりそうな点かなと。ゲーム時間がかなり短く、やりこみ要素もほとんどありません。難易度もそこまで高くないので、試行錯誤する時間もなく、ざっと通しで3~4時間ほどで物語が全て終わってしまいます。想像するに予算の都合や先ほど述べた見ていてつらくなる演出が多数あるため、プレイ時間を短くしているのではないかと思われます。しょうがない側面はあるのでしょうが、3,4時間のプレイ時間で4000円くらいですからね……。
正直に言うとちょっと割高感はありました。アートワークを見てビビット来た方は買ってそんのない作品だと思いますが、悩んでいる、検討段階の方はセールで少しお安くなってから手に取った方がよいかもしれません。
了
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