皆さんはinfinite macをご存じでしょうか。簡単に言えば、昔のmacOSをブラウザ上で再現したアプリケーションです。
そんなもの昔を懐かしむ以外に何に使うのか? と思う方もいるかもしれませんが、実は過去にmac用に発売されていた古のゲームが楽しめてしまうんですね。これがすごい。
infinite mac上にも初代シヴィライゼーションやプリンスオブペルシャ、レミングスなどがプリインストールされているのですが、もちろん、ソフトデータがあればそれを疑似的にインストールすることによって楽しめてしまいます。
今回は、そんなinfinitemacで楽しめる、オーパーツのようなRPG「サムライメック2」をご紹介していきます。
サムライメック2 アストロノーカの森川幸人がデザインを手がけた、サイバーパンク・スペースオペラ、ミーツ奇妙な日本系RPG
サムライメック2が発売されたのは1992年。92年と言えば、スーパーファミコンが発売されてから、3年ほどたった時期です。同時期にはこのブログでも過去に紹介した「ソウルブレイダー」などの名作が発売されています。一方で、ファミリーコンピューターファイヤーエムブレムの第二作目「ファイアーエムブレム外伝」が発売されていたり、pc98の新作が発表されていたりと、まだまだ過渡期でした。
そんな、時代にマッキントッシュ専用として発売された本作サムライメック2、ところどころで現代のソフトと比較すると遊びづらい部分が残るものの、時代を先取りするかのような要素が様々盛り込まれた作品となっています。あえて言葉を選ばない言い方をすると、通常のRPGファンにこびないめちゃくちゃ攻めた一作です。
開発は株式会社ヒューリンクス。現在はソフト開発やテスターなどをメインの業務に据えているようですが、存続はしています。当時のゲーム開発者の悲喜こもごもを描いたがっぷ獅子丸氏の本には80年代、90年代バブル景気、そしてその名残があったゆえか、社会にも勢いがあり、とりあえず、ゲームを作って出す企業が相次いだ、みたいなことが書かれているのですが、そんな雰囲気の中でヒューリンクスからこのサムライメック2が生まれたのやもしれません。
ちなみに2とあるように、サムライメックはシリーズものです。サムライメック、そして本作2が出ています。サムライメック初代に関してはまだ、カラーモニターが一般的でなかった時期に生まれた作品のようで、全編モノクロ、BGMもほとんどなしとかなり硬派な仕上がりです現代で遊ぶには少しさがありますが、今作2はカラーグラフィックであることに加え、BGMも豊富に用意されるなど大幅にグレードアップしたものとなっています。
シリーズともに製作ディレクション、敵グラフィックを手掛けたのが、AIを活用した斬新なシミュレーションゲーム「頑張れ森川君2号」と「アストロノーカ」を世に出している森川幸人氏です。この絵がまたいいんだぁ。
ちなみに森川氏サムライメックがゲームに携わるのは初めての作品だったようです。ただ今作では、まだプログラミングには関わっていなかったようですね。
大江戸をまたにかけるサイバーサムライになれ!
本作サムライメック2の舞台となるのは、日本の江戸時代のような「サムライ」文化の残る、銀河系「大江戸銀河」です。主人公である流れのサムライは、使える主を持たず、用心棒や賞金稼ぎのようなことをして、その日暮らしをしています。さらに名を高めるために、より強い敵を求めて、大江戸銀河にやってきた彼を待ち受けるものやいかに。といったストーリー。
全体的に言うと、ちょんまげ、花魁、忍者、サムライといった良い意味でのエセサムライ、エセエド文化がある舞台を背景に、ハードボイルドなスペースオペラが展開されるゲーム、といった様相になっています。
主人公であるサムライは、大江戸銀河中にあるそのほかの銀河系をつなぐ連絡船の寄港先である「長崎島」や改造アイテム、メックを中心とした自由市場のある「蜘蛛の巣島」天下の「大江戸シティ」など大江戸銀貨の各地を転々としながら、民の困りごとを解決したり、夜を乱す悪鬼である「賞金首」たちを退治し、名声を高めていくのが、ゲーム全体の流れです。
賞金首という設定やゲームの背景を説明すると、91年からシリーズ発売されたメタルマックスのような、いつでもエンディングができたりする自由度が売りのRPGを想像してしまうかもしれません。というか私自身が、サムライメック2を知ったときにそんなことを想像したのですが、基本的にはイベントで移動地点が制限されるJRPG的な一本通行のゲームとなっています。
コミックのようなコマ割りが魅力の剣戟アクションとわくわくする、メカ改造要素
世界感に次いで本作の魅力となっているのが、他に類を見ない独自の戦闘システムです。本作サムライメック2では、特に仲間などはおらず、サムライは一人で戦うべし、といった感じでプレイヤーは主人公の分身である「サムライ」一人を操り、敵と対峙することになります。
主人公一人で物語を進めるだけであれば、初代のドラゴンクエストでもそうですし、最近のアクションRPGもそうなっています。目新しいものではありません。加えてサムライメックの戦闘は基本的にコマンド選択形式です。これだけ見るといたって普通。「じゃあ通常のRPGとおなじじゃねぇか」と思われるかもしれませんが、一人のキャラでプレイ、コマンド選択式に加えて、本作独自の疑似的なリアルタイム要素が設けられています。
それが「体制」です。
主人公であるサムライは
・上段
・中断
・下段
に、構え、刀をふるうことができます。構えにはそれぞれに命中率や威力さなどの特徴が設け有られており、これが面白い。例えば上段では最も強力な攻撃である「切りおろし」ができる。下段の構えであれば、命中率の高い切り上げができる、しかし、切り上げは威力が弱いといった具合です。
さらに、リアルタイムといったように、サムライの一挙手一投足はリアルにできています。例え刀を振り下ろせば、サムライは下段の構えに移行してしまい、連続で切りおろしを使うことができない。といった具合です。
それぞれ、体制を変えたり、攻撃したりするごとに、ターンが消費されるので、選び方に注意をしなければ、永遠と攻撃ができずに相手に滅多打ちにされるといった事態も発生するので選び方には注意、というわけです。これが疑似的なリアルタイムといったゆえんです単にコマンドを作業的に押していれば戦闘が終わるという、コマンド式RPGが宿命的に単調になってしまうことを防いでいます。
ただ、相手のコマンドがわからなければ、この構えの要素は戦略もへったくれもなく、運要素になってしまうわけですが、サムライメック2ではそんなことはありません。
それぞれの敵キャラクターは漫画のコマ割りのように行動前にイラストが変わるようになっています。例えば、振りかぶり攻撃の場合は敵の絵が振りかぶっているようなものに変わる、強攻撃の場合には準備動作を模した絵に切り替わるといった具合に事前に切り替わるといった具合です。
表情や細かなしぐさも変化しておりこの演出がにくい。無理にアニメーションにするよりも、イラストを主軸にすることによってよりリアルなゲーム体験ができるようになっているんですよね。戦闘システムを戦略的にするだけでなく、このゲーム独自の魅力を醸成するのにも一役買っているとも思います。
武器や防具を自分で改造してしまおうぜ。
戦闘システムに係わるところでもう一つ良いのが武器防具を自由自在に作れるメック要素。メックとタイトルについているように、本作は江戸的な世界観を舞台にしつつも、みんな金属を部品にして、武器や防具やお役立ち道具通称「メック」を作るという文化のある、サイバーでパンクなゲームとなっています。各地に落ちている基金属を併せれば、自由に強力無比な相棒が作れちゃうというわけです。
もちろん、後に発売されたメダロットシリーズや先ほど例に出した、メタルマックスのような凝りに凝ったカスタマイズ要素、というほどボリュームがあるわけではないのですが、完成するたびに「がっちゃん」と機械的なSEがなったりと、雰囲気は最高です。あと、やっぱり森川氏のイラストが良いですね。
宇宙を旅する、サムライ用心棒がDIYで武器・防具を作りながら戦うRPG、最高ですよね、と私なんかは思ってしまうわけですが、サムライメック2では、そんな要素がいい感じにまとまっています。好きな人はたまらんでしょう。
サムライメック2を遊ぶ方法
そんなサムライメック2ですが、macもとい、マッキントッシュ専用のソフトだったこともあって、現在では入手困難でプレミアがついています。そもそも、入手できたとして、古の漢字Talkやmac os9など古のOSが使えないと遊べません。もちろん、冒頭お話したように、OSはinfinite macというエミュレータがあるので何とかなるのですが、ソフトはどうするのか。
実はサムライメックゼロというファンサイトを運営している好事家が、株式会社ヒューリンクスや当時の制作陣と交渉の末、シリーズ2作品とも、サイト上でただでダウンロードできるようにしてしまっているのです。恐ろしい執念。ちなみに当時の制作陣へのインタビューや攻略情報などもあり、充実したコンテンツもあり、読んでいるだけでも面白いサイトになっています。
このソフトデータをダウンロードして、infinitemac(こちらの漢字talk7版で筆者はプレイしました)にコピペして解凍すればサムライメックを遊べちゃうぜ! というわけ。
といいつつも、個人の方があくまで趣味で運営しているサイトですから、いつどうなるかはわかりません。古のゲームに触れたい方は、サムライメックゼロに急ぐとよいでしょう。オーパーツのような魅力あるサムライメック世界があなたを待っています。
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