この記事では2022年5月5日(PC)に発売されたアクションゲーム「Trek to Yomi(黄泉への旅)」(クリア時間約10時間 難易度浪人(ハード)」のゲーム概要や感想をまとめて紹介します。購入を検討している方は参考にしてみてください。
Trek to Yomiストーリー概要
とある村を治める武士「大輝」(ひろき)は師、三十郎とともに村を守るために賊と戦った幼き日のこと、そして師の今際の際の言葉を思い出していた。
「皆を守ると契りをかわせ……」
大輝がその言葉を思い出すのには理由があった。
大輝が治める村のある地域では、謎の武将率いる賊による略奪と殺戮が相次いでいたのだ。
その魔の手は近隣の上川村まで迫ってきていた。
「上川村の民を引き入れ、ともに戦おう」
妻、愛子の助言をうけ大輝は、渦中の上川村へ向かう。
先に上川村に向かっていた仲間を失いつつも、大輝はなんとか、上川村を襲っていた賊の首魁を切り殺し、村を救う。
朗報を伝えるべく、自」らが治める村に戻る大輝だったが……。
いたるところに放たれた火。
女子供まで容赦なく切り殺す賊たち。
横たわる「なじみの顔」たちの亡骸。
そこには地獄が広がっていた。
上川村は大輝たちをおびき寄せる餌だったのだ。
後悔しながらも、妻・愛子を、そして残された村人を助けるため奮闘する大輝は、ついに、賊たちを率いる武将「影炎」(かげろう)のもとにたどり着く。
影炎の姿を見て、大輝は驚愕する。影炎こそ、大輝が師、三十郎とともに、幼いころ戦い、退けた賊の首魁だったのだ。
「我が師が命を奪ったはず……」
たじろぐ大輝に、影炎は告げる。
「あの女が最後まで呼んでいたのはお前の名か……」
怒る大輝は影炎に切りかかる。
しかし、剣に迷いがあったのか、その刃は届かず、大輝は影炎の凶刃に倒れてしまう、
かに思えたが……。
目を覚ました大輝。そこには、地が浮き、奇怪な化け物や幽霊がはびこる奇妙な世界が広がっていた。
大輝は天地開闢の神話に描かれた「黄泉の国」に似たこの世界を旅しながら、自らの行いの意味、生きる目的を知るのだった。
といったのが大まかなストーリー。
モノクロ映画調で描かれたTrek To Yomiの世界
本作をプレイしていてまず目に入ってくるのが、モノクロで描かれる世界です。
ゲーム自体は後述するようにシンプルな2Dベルトスクロールアクションなのですが、
ところどころでフィルム映画特有の「ぶちっ」と画面が途切れるようなノイズが走ったり、壊れる足場を走りながら進んで行ったり、アニメーションが差し込まれたりと随所に「映画的」な表現が見られます。
この映画的な表現がとにかく素晴らしい作品です。
時代劇映画風、ではありますが、ゲームの大筋は「黄泉の国」を舞台としていたり、戦国時代的な世界観ながら、江戸時代につくられた葉隠の一説「武士道は死ぬことと見つけたり」が差し込まれたりと、時代が入れ子構造になっているような表現がなされるなど、基本的には和風ファンタジー的な作品となっています。
いわゆる日本人が描く西洋的な「剣と魔法のファンタジー」を諸外国のクリエイターが日本を舞台に作った感じ。
とはいえ、いわゆる奇妙な日本的作品ではなく、舞台に登場する細かな神話など細かなところはしっかりとリスペクトのあるものになっています。
日本語ローカライズも、登場人物の語尾に「じゃ」が付きがちだったり、いちいち漢字を「音読み」したりと時代劇的な大仰さはありますが、違和感はありません。声優陣も影炎役の大塚明夫、主人公の大輝役の加藤将之さんなど豪華です。
2D剣戟ベルトスクロールアクション
さて、本作のゲームシステムを見ていきましょう。本作は端的に言うと、剣戟がメインの2Dベルトスクロールアクションゲームです。
進んでいくと現れる敵をすべて倒すと次のエリアに進めるようになり、最終盤に現れるボスを倒すことでクリアとなる、いわゆるステージクリア型となっています。
先述したようにステージの随所は3Dで奥行きがある画面で表現されますが、敵との戦闘は直線的な2Dアクションで、わかいやすいところでいうと、レトロゲームのスパルタンXのようなシステムです。
敵は前方、あるいは後ろから押し寄せ、大輝に襲い掛かってきます。プレイヤーは大輝を操り、時に敵の攻撃をはじき隙を作り、強力な剣技で切り伏せ、時に素早い剣技で攻撃する暇を与えずに、次から次に切り捨てていくことができるのです。
また道中では弓矢、苦無、大筒などの遠距離武器も手に入ります。囲まれる前に遠くの敵を大筒で排除し、安全に敵を排除していくことといったプレイも可能です。
基本操作は下記の通りです。(以下Dualshock4使用時です)
移動 | Lスティック |
弱攻撃 | □ボタン |
強攻撃 | △ |
ローリング | 〇ボタン |
ダッシュ | Lスティックと〇ボタン |
ガード | Lボタン 敵の攻撃にタイミングよく押すとはじいて体制を崩す |
遠距離武器 | Rトリガー(十字キー左右下で武器種を切り替え) |
振り返る | ×ボタン |
基本的にはこのシンプルな操作を駆使して、黄泉の旅を進めていくことになります。
剣技に関しては、格闘ゲームのように
下、弱攻撃3連続
弱攻撃3連続から強攻撃
といったようにコマンド入力によって派生技が出るようになっており、これら派生技は道中で村人を助ける、アイテムを集めるなどイベントをこなすことによって増やすことができます。
ライフが失われると、ゲームオーバー。ステージの要所にあるリスタートポイント「灯篭」から再度進められるようになっています。
死に覚えの高難易度
さて、こうしたシステムを使いバッタバッタと敵を倒していく剣戟アクションがだいご味の本作ですが、難易度はかなり高く設定されています。(以下は筆者難易度浪人プレイ時)
敵の攻撃は高く、ガードができない状態で連撃を喰らうと即死。
後ろを向いているときに切られてしまったり、強攻撃をガードできないと、敵によっては即死。
大輝のアクション一つ一つはスタミナゲージを消費しないとできないようになっており、スタミナゲージを消費しきると、虚脱状態になってしまい、こちらもこのときに攻撃を喰らうと即死。
敵の出現ポイントを見誤ると、後ろと前から敵が出現し、めった刺しになって即死。
といった有様で、適当に進み、適当に切りかかっているだけでは、攻略はできません。
ただし、運の要素が左右するような理不尽な難易度ではありません。
レトロアクションゲーム的な死にながら、ステージの構造や敵の攻撃を覚えていくことで道が開けていく、そんな楽しさがあります。
加えて、レトロゲームのような難易度設定なし、一定以上死亡すると最初からやり直し、といった容赦のなさもありません。仮に難しすぎて楽しめなければ、難易度設定にて調整するのもありでしょう。
Trek to Yomi総論+気になる点
以上、本作の細かなゲームシステムや背景世界について解説してきました。総論的に言えば、「和風、剣と魔術のファンタジー」的世界観は若干奇妙な点もありますが個人的には好み。
こういった世界観の作品としては「鬼武者」などの先駆者もありますが、同作のようにファンタジーに偏りすぎることなく、日本的な文化を尊重する姿勢にも好感が持てました。
アクション面では高難易度、レトロゲーム的なシステムで緊張感のある、もののふの戦いを表現。それだけでなく、現代のプレイヤーが遊びやすいような調整もなされており、こちらも完成度が高いと感じました。
各メディアにて「今年一番の作品」と語られるだけはある、一作です。
全体的な完成度は高く、重箱の隅をつつくような話ではあるのですが、以下の点については気になりました。
・敵の挙動がわかりづらい
本作では大輝の戦闘時の挙動は奥行きがないもの、つまり、前後に動くだけになっています。一方で、敵の動きには疑似的な奥行きがあります。簡単に言うと、敵が複数登場した場合、
大輝がいるレーン 敵との戦闘が行われる
大輝がいないレーン 敵が待機している、大輝の攻撃は当たらない
といった形で敵が動いており、敵は大輝の挙動に応じて、待機レーンから参戦したり、待機レーンに戻ったりを繰り返します。この動きを見極めることも、重要な攻略ポイントなのですが、白黒の画面が相まって、正直なところかなり見づらい。
奥にいると思っていたら、実は大輝がいるレーンに乗っていて、そのままタコ殴りにされる。
攻撃できると思って、近づいていったら、待機レーンの方にいて。相手をしているうちに、後ろからきた敵にめった刺しにされる。
といったことが特に終盤頻発し、若干ストレスを感じました。
・時代劇ではなく、あくまでファンタジー 少し「奇妙」に感じる人もいるかも
本作は発売前、各種メディアで時代劇風など、黒沢明の映像を参考にした、といった文言で紹介されてきました。個人的には前評判を聞いて「ゴーストオブ対馬」的な史実を盛り込んだりした作品なのかな、と思っていたのですが、繰り返し書いているように、和風世界を舞台にしたファンタジーです。
そして、化け物が出てくる世界観で、「武士道」「愛」「義」というような西洋から見た「和風」な物語が、こってりと描かれます。
この組み合わせは正直なところ「奇妙」です。個人的には好きなのですが。気になる人はいるかも。
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