8月12日に配信を開始した( Epic Games NintendoSwitch PS4(日本版は未定) )Thomas Happ Gamesの新作「Axiom Verge2」。
クリアまでプレイしたので、感想をまとめておく。端的に言えば、完成度の高いゲームではあるが、ボリュームは少ない。正直なところ、メトロイドヴァニアと聞いてプレイするとがっかりするプレイヤーは多いだろう。少なくとも前作「Axiom Verge」のようなボリュームたっぷりのこってりなメトロイドヴァニアをAxiomVerge2に期待することはできない。
Axiom Verge2 ストーリー
前作Axiom Vergeは研究が失敗したことによって起こった事故によりエイリアンに侵攻されている不気味な世界に転移してしまった科学者が主人公だった。
本作Axiom Verge2も根底にある世界感は同じである。だが、主人公も、冒険をする世界も異なる。主人公は巨大コングロマリットGlobe3のCEOインドラ・チョーダリー。彼女は南極大陸で突如失踪した同社の研究チームを探すため、誰もいなくなった南極基地へ向かう。南極基地に唯一ある通信端末から謎の人物による通信が入る。インドラがその導かれるまま進んでいくと、たどり着いたのは地球と似た姿をした、異世界「キエンギ」だった。
さまよう中、インドラはおぼれ、命を落としかけるものの、奇妙なツボに封印された「アマシーラ」と名乗る存在に命を救われる。アマシーラは自らをマシンの知能集合体「アーム」であると語り、インドラに奇妙な力を託すのだった。
アマシーラは「キエンギ」から脱出するために、さらに多くの「アーム」たちの力が必要であると、インドラに語る。
インドラは同じように「キエンギ」にたどり着き、元きた世界に戻れなくなった研究チーム面々がいるキャンプ地をたどりながら、アマシーラ、そしてキエンギに点在するアームたちの力をかり、通信端末でのみやりとりができる謎の存在に導かれながら、キエンギから「地球」にかえる方法を模索していくのだが……。
Axiom Verge2 世界観 美麗なドット絵とボーカル付きのBGMが最高
前作Axiom Vergeが敵対的でグロテスクなエイリアン溢れる悪夢のような世界だったのに対し、Axiom Verge2の舞台キエンギはオリエント調の美しい世界だ。
各地に散らばった資料に目を通すと、キエンギの原住民「サンギガ」は地球で言う、中世の中央アジアあたりのような文化を持っているということがわかる。
一方で、キエンギはナノマシンによる人間の機械化、高度な戦闘ドローンが徘徊するなど機械技術だけが異様に進化したいびつな形の文明を持っていることも明らかにされる。前作は8bit調でドットがあらく、ゆえにグロテスクな描写にパラメーターを振ったようなところのある作品だったが、Axiom Verge2ではドットの表現も進化。この奇妙な雰囲気を見事に再現していた。
ストーリーはいわゆるSFだ。レトロゲームライクなゲームのストーリーというと、プレイヤー側にあまり多くは明示されず、プレイをすることで物語を体感していくゲームが多いと個人的にはおもっているのだが、AxiomVerge2はしっかりとテキストで綴っていく。
機械文明の誕生により揺らぐ生命の存在意義、データ化された人間は果たして人間と言えるのか、といった根源的な問いを描き、その中で家族の絆や高度資本主義に翻弄される人々の苦悩にも触れていて、重厚だった。
そしてそれらの世界を彩るBGMがたまらない。インドなど中央アジアの伝統音楽のような雰囲気を出しつつも、ジャズやポップスのような旋律も入り交り、これが切ないAxiom Verge2の物語に合っている。Axiom Verge2はボーカルが入ったBGMも多いのだが、雰囲気を崩さない良曲ばかりだった。
Axiom Verge2は前作と変わらずシンプルなメトロイドヴァニア
前作Axiom Vergeと変わらずAxiom Verge2も2D 探索アクションゲーム、つまりメトロイドヴァニアである。基本的な点で、大きな変更はない。もちろん、2という名前を冠しているので、細かい点は変化、あるいは進化している。
大きな変化の一つとしてはメイン武器の変更が挙げられる。前作Axiom Vergeは銃火器がメイン武器だったが、Axiom Verge2ではブーメランやピッケルなど世界観に合わせた前時代的な武器がメインとなっている。近接武器にはそれぞれ攻撃力とクールタイムが設定されていて、例えばダガーは手数は増やせるが威力は低い、アックスは攻撃力は高いが素早く攻撃はできない、といった具合に武器ごとの特徴がある。
また、敵にも変化がある。前作がエイリアンであったのに対し、Axiomverge2はキエンギを徘徊する敵対的なドローンが敵に変った。インドラは近接武器やブーメランそして、後述するハッキングの技術を使って、ドローンたちと戦うことになる。
ゲームを進める上で重要な特殊技は、謎の災厄に見舞われた非力な人間であるという物語上の主人公の立ち位置を意識してか、メトロイドシリーズの「モーフボール」の人体を改造するようなタイプの特殊技がないという点はAxiom Vergeと変わっていない。
ただし、Axiomverge2ではアームの力を借りたインドラが徐々に人間ではないなにかになっていくのだが、それに合わせて、人間離れした魔術のような特殊技を覚えるようになっている。悪魔城ドラキュラ月下の夜想曲の「霧の魔術」のような技もあり、少しにやっとしてしまった。
新たな特殊技としては、上述した霧の魔術に加え、ハッキングとドローンが追加された。ハッキングは文字通り、ハッキングポイントを使い、敵をハッキングして、自爆させたり、味方にしたり、足場にしたりする。また、構造物をハッキングして道をあけることも可能だ。
もちろん、無制限にできるわけではない。ハッキングは効果が及ぶ範囲が設定されており、また後述するスキルレベルによっては利用できないものもあるなど制限が設けられている。
AxiomVerge2でリニューアルされたもう一つの特殊技がドローンだ。Axiom Vergeにもドローンは登場したのだが、Axiom Verge2ではより重要度が高まっている。アクションも追加された。単にプレイヤーがかかがんでも入れない通路を進むだけではないのだ。
Axiom Verge2のマップにはドローンでないと入れない「ポータル」が点在している。このポータルにはいることで異世界「ブリーチ」にたどり着くことができる。
ブリーチはキエンギの世界が16ビット調だったのに対し、8ビット調のグラフィックで、音楽もそれに合わせたチップチューンのような雰囲気に変わるなど、芸も細かい。
内部はキエンギの現実世界に対応したものとなっている。ブリーチ世界から自由に出ることができる特殊アイテムが手に入る中盤以降は、ブリーチを歩くことで、現実世界を普通に歩くだけではたどり着けなかった地点に行けるようになる。
また、キエンギではインドラの力では何をやっても壊せなかった構造物をブリーチ内部で構造物を破壊すると、新たな道が開くようになっていたりりと探索する楽しさがある。
その他にAxiom Verge2では、基礎能力値を点在する「アポカリプス・ノード」を集めることによって上げられるようになった。
道中に点在するアポカリプスノードを拾うと大きさに応じて1~2ポイントが手に入る。スキルセットの項目は「フィジカル」「コンバット」「ハッキング」「ドローン」の4つ。それぞれ複数のスキルが用意されている。スキルポイントをつかうことで、HP、ハッキングや特殊能力使用回数の上昇、武器攻撃力の上昇、ドローンの攻撃力アップ、攻撃速度アップといった恩恵が得られる。
ゲームの進め方としてはオーソドックスなメトロイドヴァニアと同様、マップに点在する重要アイテムをNPCの手助けを借りるなどして探し、探索できる範囲を増やしていく。道中に落ちている、スキルアップアイテムを寄り道して探しながら、能力値を上げ、道中を有利に運べるようにしていく。という流れになる。
道中には祠のようなモチーフのセーブポイントがあり、祈りをささげることで、セーブできるほか、能力を回復することができる。死ぬと最後にセーブをした祠に戻るのだが、ロード時間もそれほどなく、演出も相まって苦痛には感じなかった。
また、中盤以降はセーブポイントを行き来できるファストトラベルアイテムが手に入る。そのため、レトロなメトロイドヴァニアにありがちな、膨大なマップを右往左往しなければいけないという面倒くささは省かれている。
Axiom Verge2はシンプルなメトロイドヴァニアの楽しさはそのままに、ストーリーや独自の要素を破綻なく融合させているゲームだ。全体的な完成度は高く、前述した世界感もあいまり、AAAゲームに劣らない素晴らしいゲーム体験をプレイヤーに与えてくれる作品といえるだろう。
ただし、メトロイドヴァニア好きの筆者にとって冒頭で述べたように本作Axiom Verge2は今一つ物足りない作品であったことも事実だ。
Axiom Verge2ボスは全部で1体、クリアまでのプレイ時間も数時間メトロイドヴァニアとしては物足りない
Axiom Verge2は全体的にボリュームが少ない。また淡々としていて地味だ。まず、ゲームの進行上、戦うボス(イベントが挟まれる戦闘といってもいいかもしれない)は全部で2体しか登場しない。エリアボスのような存在はおらず、倒さなければいけないボスは1体だけだ。
道中、倒すと「アポカリプス・ノード」を落とす特殊な強敵もいるのだが、必ず倒さなければいけないわけではない。基本的に逃げても、戦わなくても物語は進んでいく。しかも一部の敵以外は同じキャラの使いまわしだ。加えて、それほど強くない。基礎攻撃力をマックスまで上げたインドラの敵ではなかった。
では物語上必ず戦う必要のあるボスはどうかというと、これも、物足りなかった。イベント戦だからである。ネタバレになるので、明言は避けるが、ストーリー上インドラは不滅の存在になってしまう。それはボス戦にも反映されている。つまり死なない(Game Overがない)のである。ボスとの戦闘は簡単なパズル要素があるのだが、正直、退屈だった。少なくともAxiom Vergeで出てきた巨大ボスとの手に汗握るような戦いではない。
メトロイドヴァニアの魅力の一つと言えば、新しい能力を開放したときのおつかい要素。つまり、「ダブルジャンプ」や「ダッシュ」などが可能になるアイテムを入手した後、序盤のマップに戻って、いけなかったところにいったり、とれるようで取れなかったアイテムをとったりしてストーリーを進めていく点だが、これも正直うす味だ。
プレイしていて終盤あたりに気が付いたのだが、Axiom Verge2では、新能力を手に入れたすぐそばに、その能力を使うことで切り開ける局面が用意されている。そして、それが最後まで続くようなゲーム展開になっているのだ。そのためプレイヤーはマップをさまよう必要はない。というかできない。
もちろん、そのほかのメトロイドヴァニアと同様に強化アイテムを探すというやり込み要素はある。だが、単なるやり込み要素でしかない。スキルは上げなくても進行不能になったりはしない。だから、ゲームを進める上で意図的に集める必要がない。しかもある程度の強化アイテムは、ストーリーを進めていく道中で手に入ってしまう。プレイヤーが試行錯誤、例えば、メトロイドで言えば、壁にミサイルを当てたら、壊れた、何度も試してそれに気が付いた、とか、モーフボールの形になってちょっとした隙間にはいったらそこが隠し通路だった、みたいな驚きがあまりないのである。
加えて、ボス戦でも先述したように、インドラは死なない。つまり、そもそも強化をする必要がないのである。全て100%にするまで辞めたくない、というコアゲーマーであれば別だが、一般のゲーマーでは頑張て100%までアイテムを集めようという気持ちを抱きにくいものだった。
全体のプレイ時間はあくまで私の体感だが、5時間から長くて10時間程度(かなり迷って)、初見プレイヤーがアイテムを100%集めて15時間くらいだろう。慣れているプレイヤーなら別にスピードランをプレイしているような意識をしなくても、もっと速いタイムでクリアできるだろう。もう少し、こってりしたものがほしかった、というのが正直な感想である。
ストーリーを考えると仕方のない面も
ただ、物足りないとは書いたものの、Axiom Verge2のストーリーを考えると、しかたのない面もある。本作のストーリーは過去現在未来様々な視点で語られ、それに合わせた布石もたくさんちりばめられている。要するに、お使いをして、うろうろしていると、何が何だかわからなくなってしまうような複雑さなのである。
一見すると物足りないものの、道中の流れはプレイヤーがストーリーの本筋を見失わないように、用意された導線のようにも思える。
Axiom Verge2はメトロイドヴァニアな2D探索アクションゲームというよりは、メトロイドヴァニアなアクションアドヴェンチャーなのかもしれない。そうとらえると、腑に落ちる部分もある。
ちなみに、ネタバレになるが、物語終盤では、Axiom Verge2に直接的なつながりのある次回作をにおわせる展開がある。本作の探索アクションゲームとしてのボリュームの少なさを考えると、DLCなどがあるのかもしれない。
Axiom Verge2は発売のアナウンスも急だったので、実はこれから、「完全版」が出たりして……。当分はそちらに期待したい。
※ゲームは非常に完成度が高くよかったが、Switch版で結構重大なバグがあった。ダブルアックスという武器をAボタン割り当てにして使うと、使用後プレイキャラのインドラが硬直、移動キーとジャンプしか受け付けなくなってしまうのである。武器によって硬直時間があるので、おそらくそこのトラブルだろう。こちらも改善してほしい。これから遊ぶ人は注意されたし。
→ソフトが更新され、改善されたようである。
Axiom Verge2 Epic GamesStore
Nintendo eshop
サントラ
その他インディーゲームのレビューはこちら
コメント