9月15日に突然発表されたウィザードリィ第一作目『狂王の試練場』のリメイク版。ゲームの目標である邪悪な魔導士ワードナを撃破したので、感想をまとめておきます。(プレイ時間約30時間)
短評
ストイックなダンジョン探索。それでいて「一撃死」「石化」「レベルドレイン」などなど凶悪な要素がてんこ盛りで常に気が抜けない、ひりひりした戦闘。これらの良さはそのままに、現代的な遊びやすさ、映像表現をひっさげ名作が戻ってきました。筆者正直に言えば、ウィズはほとんど素人のような状態でしたが、それでも十分楽しめましたね。ただ、初代アップル2版に悪い意味で忠実な点があり、現代のゲームとしてはかなりストレスを感じる要素もありました。
シナリオなどはすでに多くの人が知っているので、以下ではプレイしている中でわかった仕様、そして、気になった点に分けて触れていきたいと思います。
※まだ早期アクセス版であること、筆者がオンタイムで初代やファミコン版に触れていないことから、以下誤りが含まれる場合があります。指摘していただければと思います。
基本的にはアップルⅡ準拠、キャラデザインはFC+オリジナル
システムやキャラクターデザイン周りを見ていきましょう。
まず、システムに関してはアップル2版準拠です。
わかりやすいところで言えば
・奇襲時は敵・味方ともに魔法が使える。
・逃走成功確率が低い
・プレイヤー側のカティノやモンティノはほとんど効かない。
といったところでしょうか。
この辺りはストレスでもありつつ戦闘に緊張感を生んでいます。後述しますが、リメイク版は全体のバランスとしては優しくなっているので、アップル2版の凶悪な仕様を残したのはゲームバランスとしては悪くはないかなと感じました。
設定次第では画面の右端か中央にアップル2版そのままのグラフィックまで登場させることができます。制作陣としてはあくまでもアップル版のリメイクということを前面に打ち出したかったのかもしれませんね。
では、アップル2版完全準拠かというとそういうことでもないのです。まずキャラグラフィックに関してはかなりの部分がファミコン版を手掛けた末弥純氏のイラストに準じたものになっています。特にマーフィーズゴーストはデザインはそのままにちゃんと3D化。ファミコンのドットでは描き切れなかった部分も補われており、かなりリッチです。
加えて細かいところでもちょくちょく変わっていますね。
デザインや設定面では、大人の都合が感じられる変化も。例えば忍者や魔導士など人型の敵に「女性」が加えられました。また、カシナートの剣は「ボーパルソード」と名を変えています。
システム面でも細かな変更があります。
例えば、
・全滅してもキャラが酒場に戻っている(アップルなどでは、ダンジョンの全滅した座標に行って救出する必要があった)
・死の指輪のデメリットなし(アップルなどでは保有しているだけでライフが減った。本作では一定レベル以上になればほぼデメリットなしで無限に金策ができる)
・キャラ作成時のボーナスが固定値
・転職しても能力値は下がらない
・キーアイテムはインベントリに入れなくてもよくなった。
・デュマピックでマップが表示される
・資金が共有化されている
・未鑑定アイテムを売却できる
・リセット技の仕様変化(戦闘はキャンセルできるがリセット直前に受けたダメージなどはそのまま残る)
・ワードナ撃破後マロールを使わなくても町に戻れる扉が追加
などです。この辺りは、遊びやすさと「裏ワザ」的なものでゲームの攻略を容易にさせない工夫かな、と思います。
特にキャラ死亡時の仕様変更は助かりましたね。従来の仕様だと、予備パーティーを作っておかずにメインパーティが全滅すると、事実上の「イチからやり直し」になってしまうのですが、本作ではそれはありません。なので、結構気軽に死ねます。
もちろん、完全に全滅のペナルティがないわけではありません。一度全滅すると、全滅パーティのキャラが保有していたアイテムの大半はロストとしてしまいます。ただ、この点はゲームバランス的にしかたないかなと。また、キーアイテムがインベントリを圧迫しなくなった点も遊びやすさにつながっていると思います。こういった感じで初代×ファミコン版の良さを取りつつ、現代風にアレンジされた作品に生まれ変わったといってよいのではないでしょうか。
アップルⅡ版の問題点がそのままに
ただ、欠点と言いますか、気になる点もありました。特にシステム面でアップル2版にかなり忠実にリメイクしているゆえか、改善した方がいいのにそのままになっている点がありましたね。
びっくりしたのがワードナ撃破後の演出です。なんと、装備アイテムから保有アイテムまで全て没収されてしまいます。撃破後に報酬として25万の経験値が手に入りますが全然釣り合っていません。なんじゃそりゃ! と思いましたよ。当時遊んでいた人たちはどう思ったんでしょうね。
そもそもウィザードリィと言えばハクスラの始祖のような作品です。実際本作には「ムラマサ」「盗賊の短刀」「手裏剣」のような希少かつ強力無比なアイテムが存在します。ダンジョンに潜り、戦闘を繰り返し、これらの武具を手に入れるのも楽しみの一つ。
そして、手に入れたらラスボスに使ってみたいというのがプレイヤー感情というものかと思います。ですが、使ってワードナに勝利したら全部没収です。やってられない……。
この「アイテム全没収」要素は攻略情報すらほぼなく、クリアに数百時間かかる人もいたという、アップルⅡ版に設けられていたものです。そもそもファミコン版やのちのSFC、PS版でもカットされているのに何で現代のリメイクでそのまま入れたのか。
正直最近のゲームとしてはかなり厳しい仕様ですよね。肝と言えるところを結構変えているのに何故この要素だけそのままにしているのか。納得がいきませんでした。
現時点では本作でハクスラするうまみはほぼないと思います。多くの人にとってはただダンジョンに潜り、クリアするだけのゲームになってしまっているんじゃないでしょうか。もちろん、コアなウィズファンの方々は本作をゴリゴリにやりこんでいるようなのですが、少なくとも筆者のライトユーザーは現状、ワードナ撃破後に繰り返しプレイしようとは思いませんでした。
その他にも例えば敵の挙動がアニメーションで表現されるため戦闘のテンポが遅くなるがカットできない。など「早期アクセス版」であるがゆえに、細かな点で気になるところもままありますね。日本語版も収録の正規版が発売になるまでに調整を期待したいところです。
了
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