9月7日にダウンロード配信が開始された「フィスト 紅蓮城の闇」(開発Tigames 販売bilibili パッケージ版は9月23日発売)。クリアまでプレイしたので(プレイ時間25時間ほど)、感想をまとめておく。
かわいいモフモフキャラが登場、かと思いきやハードボイルドなストーリー
「フィスト 紅蓮城の闇」の舞台となるのは「モフミン」と呼ばれる、二足歩行の獣人たちが暮らす、世界「紅蓮城」。
モフミンたちの生活は穏やかではない。「鉄犬」とモフミンたちに呼ばれる機械仕掛けの兵団に紅蓮城は支配されており、モフミンたちは戒厳令下での生活を余儀なくされている。
さかのぼること6年前、モフミンたちが暮らす紅蓮城は鉄犬たちの兵団の急襲にあった。「抵抗軍」と呼ばれる勇士たちの戦いもむなしく、モフミンたちは戦いに敗れてしまう。
抵抗軍は解体。一部はウエストランドと呼ばれる紅蓮城の西の果てにある荒地で隠れるように暮らし、紅蓮城に残った他の抵抗軍の勇士たちは街の喧騒に溶け込むようにして潜伏生活をしている。
主人公であるウサギの「レイトン」はそんな「抵抗軍」の一員だ。メカや機械仕掛けの鉄拳「フィスト」を操る鉄犬たちと闘っていた彼は、かつては「英雄」と呼ばれていたが戦士だったが、今はそのほかの抵抗軍のメンバーと同様紅蓮城で隠れるように暮らしている。
ある日レッサーパンダのモフミン「フルス」が営む拉麵屋で食事をしていると、抵抗軍の仲間である熊のモフミン「ウルス爺」が鉄犬たちに連れ去られ「監獄」に送り込まれてしまったと連絡が入る。
戦士として戦うことは等の昔にやめていたレイトンだが、仲間の一大事にはそうも言ってられず、相棒の鉄拳「フィスト」を装備し、単独監獄に向かうことになる。
図らずも鉄犬たちと再び戦うことになったレイトンは、戦いの中で紅蓮城を揺るがす力「火種」とそれにまつわる陰謀に巻き込まれていくことになるのだった。
というのが大まかなフィスト 紅蓮城の闇のストーリー。中国のデベロッパーが作成したということもあってか、舞台となる紅蓮城は50年代、60年代頃の九龍城や上海の街並みをほうふつとさせるような、煩雑でありながら、どこか力強さを感じさせる世界だ。そこに本作がうたう「ディーゼルパンク」の要素が絡み合っている。アンリアルエンジン4でモフミンたちの蒸気機関をメインとした前時代的な美麗な世界と機械兵たちの近未来的な世界との戦いが描かれているのだ。
紅蓮城は一般的なメトロイドヴァニアと同様、シームレスにつながっており、2段ジャンプできるアイテム、水中で呼吸できるアイテム、要所にぶら下がることができるアイテムなどを入手することで、探索できる範囲が広がっていくような設計だ。近年のそのほかのメトロイドヴァニアスタイルのゲームと同様のファストトラベル要素も用意されている。時にうろうろすることが面倒なことになってしまうことが多いのもメトロイドヴァニアの特徴だが、フィストでは、探索時のストレスを感じづらい設計になっている。
※ただし、筆者のプレイ環境であるPS4では、画面の遅延(次のフィールドに移行する時に、フィールドが描画されない)が多かったので、PCやPS5などでプレイしたほうが快適に楽しめるかもしれない。
三種の武器を使った格闘ゲームのようなコンボアクション
本ゲームは先述したように、オーソドックスな探索アクションゲームだ。ストーリーや世界観は独自なものの、ゲームシステム自体はそのほかのメトロイドヴァニアとあまり変わらない。
ライフ性でライフがなくなるとゲームオーバー。要所に置かれたセーブポイントからリスタートとなる。道中ではHPや後述する特殊技を使うためのSP、回復アイテムなど補助アイテムを使うためのEPを増やすアイテムを手に入れ「レイトン」を強化。ダブルジャンプや水中呼吸、障害物をすり抜けるダッシュなど特殊能力を身に着け探索範囲を広げ、要所に待ち構えるボスを倒したり、イベントをこなして進めていく。
フィストの独自性は、タイトルにあるフィストなど武器を活用したアクションにあるといっても過言ではないだろう。本作では最序盤から使える「フィスト」を始め、「ドリル」「ウィップ」合計3つの武器を巧みに使いながら敵と戦い、時には壁を壊したり、ギミックを解除したりしながら紅蓮城を進んでいくことになる。
操作自体はシンプルだ(※PS4プレイ時の環境)。基本操作は□で攻撃、△で強攻撃、〇で武器固有の動き(フィストなら敵をつかむ。ドリルならプロペラのように廻して旋風を起こす。ウィップなら敵に巻き付けレ引き寄せる)□長押しで溜め攻撃となっている。
その他に、Lスティックで特定の方向に入力し、同時に△ボタンを押すことで、武器固有のスペシャル攻撃が可能だ。スペシャル攻撃は強力だが、青いバーで表示されるSP(最大5)を消費して、発動させるため、連発はできない。
ここまでであれば、一般的なメトロイドヴァニアやプラットフォームタイプのアクションゲームと大差ないのだが、フィストはこれらの攻撃を、連鎖させる、つまりコンボさせることが可能な点で他のゲームとことなっている。コンボ攻撃や特殊技は道中に置いてあるセーブポイント(端末機)にアクセスし、敵を倒したり、豚型の貯金箱を破壊することで手に入るお金と道中にある謎解きや難所を突破した先に置いてある特殊アイテム「データストレージ」を使用することで身につけることができる。
例えばフィストであれば、□□□△(フィストをぐるぐる回す)△(フィストを叩きつける)といった具合に独自のコンボ技を発動させることもでき、ここから、↑+△(敵を上に跳ね上げる特殊技)↓+△(下方向への強攻撃を放つ特殊技)といった特殊技にもつなげることができる。
また、コンボは武器を変更(L1orL2)することでさらに続けることもでき、敵に反撃をゆるさず10コンボあてる。ひたすら起き攻めをし続けるといった格闘ゲームのような楽しみ方ができるようになっている。
正直なところ、このコンボの操作は練習が必要だ。タイミングもシビアで、使いこなすのはかなり難しい。単に探索する以外にも、いかにしてコンボを成功させるのかを追求するだけでも、慣れないプレイヤーであれば、可なりの時間を要するだろう。
こう書くと、格闘ゲームが苦手な方は悪印象を抱くかもしれない。安心してほしいただ、ゲーム自体は一つ一つのコンボを習得し随意に使いこなせなくてもクリアできるような設計となっている。
つまり、直観的にがちゃがちゃ押すような操作でも発動できる強力なコンボ(例えば先ほど説明した、フィストの□□△など)があったり、敵をはめやすい特殊技(ウィップ装備時に↓+△)が用意されており、シンプルな操作でも敵をバッタバッタとなぎ倒すことができる。格闘ゲームに馴染みがないプレイヤーでもフィストの売りである、コンボアクションを楽しむことができるはずだ。
その他フィスト独自の要素としては、ターミネートと呼ばれる動きがある。
道中の雑魚敵や一部の強敵に一定程度ダメージを与えると、敵が真っ赤になり(オーバーヒート)このタイミングで〇ボタンを押すと、発動することができる。
レイトンにカメラがグッとより、武器に応じた演出(フィストであれば敵をつかみ右に左にたたきつけたあと破壊する。ドリルであれば、コンボを決めたあと敵をドリルの回転に巻き込んで破壊する、ウィップであればウィップがまとっている電気を敵に注ぎ込み破壊する)が入り、敵を一撃で倒すことができるようになっている。コンボを決めたあと、タイミングよくターミネートまでつなげることができると爽快である。
このように、フィストはシンプルなメトロイドヴァニアでありながら、格闘要素に重きをおいた、独自の魅力を放つソフトになっている。
探索要素は多め、発見する楽しさ、探索する楽しさが充分に楽しめる
メトロイドヴァニアといえば単にアクションだけでなく、探索要素にも魅力があるゲームだ。フィストもご多分に漏れず、膨大な数の探索要素が用意されている。まず、特殊アイテム。前述したように、EP、SP、HPは、紅蓮城に置かれた3個で1組の強化アイテム「ブースター」を集めることで、強化することが可能だ。
こうした強化アイテムは単にマップを探索すればいいだけでなく、中盤以降訪れることのできるレイトン第二の拠点「ジョフル通り」にいるNPCからクエスト(のようなもの)を攻略することで集めることもできる。アイテムを探すことがストーリーを掘り下げることにもつながっているのだ。
ジョフル通りではこのほかにコレクティブアイテムを集める要素が用意されている。レイトンの相棒ともいえるウルス爺はジョフル通りに工房を構えている。ウルス爺に紅蓮城各地に置かれた「ポスター」を届けることで、「フィスト」「ドリル」「ウィップ」武器3種のカラーリングを変えることが可能だ。
ポスターはそれぞれ、「ジョジョの奇妙な冒険第五部 黄金の風邪」「新世紀エヴァンゲリオン」「銃夢火星戦記」など、著名な漫画やドラマ作品などをオマージュしたものになっており、結構手が込んでいる。集めるだけでも楽しいのだ。
また、レイを兄と慕うウサギのモフミンはエリアマップ到達度100%になった時に訪れると、そのエリアに応じて「レコード」をプレゼントしてくれる。このレコードはレコードプレイやーで聞くことができBGMに色を添えてくれる。
その他に、紅蓮城に置いてある特殊な植物の種を集めている、子ネズミのモフミン「ヴィヴィ」は種を集めたらその数に応じて、金銭やHP、EP、SP各種ブースターをプレゼントしてくれる他、特殊なアイテムを渡してくれることもある。
このように探索することによって、有利に得られる要素が多数もうけられているのが特徴だ。
メトロイドヴァニアと言えば、代表作「メトロイド」に象徴されているように、武器によって壊すことのできる壁によって、隠れた場所を開拓しマップを埋めていくのも醍醐味だが、フィストはこうした隠し要素が多いというよりは、難易度の高いアクションや謎解きをクリアすると、マップが開拓できる場面が多い印象だ。ダッシュジャンプやウィップによるつかみ、ドリルによる滑空などアクションに習熟し「これは無理では?」と思われる地形を攻略する必要がある。
このあたりにフィストの独自性があるように感じられた。
フィスト 紅蓮城の闇は全体的によくまとまっている作品である。
バグが多い点が気になるかも(PS4版以外は未プレイ)
バランスがよくメトロイドヴァニアとしても完成度が高く独自の要素も設けられている本作。良作といってよいだろう。ただ、気になる点もあった。すでにバージョンアップはされたが、発売同時に公開されたバージョンではとにかくバグが多かった。
前述するようにマップが切り替わる際にマップの生成速度がレイトンの移動に間に合わず、レイトンがマップ外に飛び出たような状況になってしまうことが何度もあった。
また、フリーズも多い。ダッシュを連続したら、そのまま固まってしまったり、特にイベントアニメーションでは何度もフリーズしてしまうことがあった。
道中アイテムをつかみながら、進むところもあるのだが、いつの間にかアイテムが消失して進行不可能に(ロードしなおしたら戻った)なってしまうこともあった。
致命的なバグ(クラッシュなど)はなかったのだが、とにかくバグが気になる作品だった。
PS4以外のPS5やハイクオリティのグラフィックボードを積んでいるゲーミングPCではあまり報告がないので、気になるプレイヤーで複数ハード保有している方はより性能の高いハードでプレイすることをお勧めしたい。
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